さようなら、麻理子さん。
私:「麻理子さんはお金の話しかしませんね。
あなたは何十年も生きてきて、頼りになるお友達や、信頼できる人はいないんですか? もしいないとしたら、どうしてそんな状態になっているのか、ちゃんと考えた事がありますか? 今まできちんと周りの人と向き合って来ましたか?
SNSでお金の影をちらつかせて都合良く使える人材を探そうとするよりも、もっと大切なことがあるんじゃないですか?」
これまで打てば響く反応速度で長文を返してきていた麻理子は沈黙している。さすがの詐欺師も人格攻撃されることを前提とした文章は用意がなかったか。
かまわずに次の矢を撃つ。
私:「これは何でしょう? 2022.10から稼働している」
麻理子と同じアイコンの別名義のアカウントを添付した。
私:「これは? 2017.07から稼働している」
次に麻理子のアイコンの元になったと思われる、スピ系アカウントを添付。麻理子は沈黙したままで既読だけがつけられる。
私「同じアイコン、同じフルーツや犬の写真。納得のいく説明をして欲しい」
既読。そして沈黙。麻理子よ、今フル回転ですか? それとも面倒臭くなって次のターゲットに移ったかい?
私:「おい、ちゃんと考えろよ。お前が始めた物語だろ?」
このまま数時間放置したけれど、麻理子から返信が来ることは無かった。
つまらない。あまりにもお粗末なシナリオだった。こんなのに引っかかる人っているの? と思ってしまうけれど、実際には年間数億円じゃきかない金額の被害があると聞く。もし身の回りでそれっぽい話を耳にすることがあったら、全力で突っ込みを入れるか、試しに♯9110に相談するよう勧めてみて欲しい。
最後に、私は用意していた文章を流し込んだ。既読が付くのを待ち、しばらく置いてからSNSで通報をし、麻理子のアカウントをブロックしたのだった。
私:「良かった、末期癌に苦しむ身寄りのない老女はいなかった。さようなら麻理子さん。少しだけどダブリンという街を知ることが出来て楽しかった。
もし私とやり取りしていたのがAIではなく人間なのだとしたら、顔を洗って、水を飲んで、外の空気を吸ってみて欲しい。陽を浴びるのも良いと思う。
人生はどこからでも、何度でも、方向を変えることができる。どのタイミングでもあなたがそうしたいと思った時がチャンスで、気持ちが晴れやかになる方向がベストなのだと思う。
あなたなりに一生懸命に考えて、あるいは仕方なくこんな事をしているのかも知れない。もしかしたら、望んでしているのかも知れない。でも、少し立ち止まってよく考えて欲しい。他人を騙すことが、本当に心の底から、ひとかけらの後ろめたさもなく、幸せな気持ちになれる事なのでしょうか。他人を騙した目で見た景色は、本当に美しいと感じられるのでしょうか。
この文章が上手く翻訳されて届けば良いと思う。
さようなら。どうか、体には気をつけてね。健康はお金では買えないものです」
ダブリンへの手紙 〜詐欺アカウントからのメッセージに返信をしてみたら〜 野村絽麻子 @an_and_coffee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます