偏愛の果て、満ちていく虚無

 これは単なるホラーでも萌え系でもない、愛と孤独、そして偏愛が生む狂気を静かに描いた傑作でした。

 フィギュアたちを「聖域」に祀るように愛でる主人公の姿には、オタク文化への真摯なリスペクトと、同時にその裏に潜む“執着”の危うさが滲んでいます。ミコさんが動き出す奇跡は一瞬の夢のようで、読者までも幸せな錯覚に誘いますが、その幸福は崩壊の前触れでしかなかった……。

 何より恐ろしいのは、可愛い存在が静かに侵略してくる描写。音、視線、動きの妙が鮮やかで、まるで部屋の空気までもじわじわと乗っ取られるよう。ラストの“何もない空間”は、愛した存在を失った人間の虚無そのもので、胸に深く突き刺さります。

 静かな狂気と、偏愛の果ての結末が、読後もずっと心を離しません。

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