見えないからこそ、世界は美しい
- ★★★ Excellent!!!
この物語は、星を見失った青年・晴と、小さな猫・アルの出会いから始まる静かな奇跡の連なり。視力を失い、心も閉ざした晴のもとに現れる猫。その素朴な存在と夜空の風景が、彼の感覚世界を優しく塗り替えていく様子が、本当に丁寧に描かれています。
そして、ふとした仕草や微かな匂い、心に響く「音」として星を探すという発想が、とても詩的で独自の美しさがありました。見えないからこそ世界が細部まで立ち上がってくる感じがあって、読んでいるこちらの感覚まで研ぎ澄まされます。死神フラウロスの視点も、冷たいはずなのにどこか優しくて、静かな会話が心に残りました。
しんみりするのに、読後は不思議と前を向ける物語です。猫が好きな人、夜や星の話が好きな人、優しいファンタジーで泣きたい人、心を立て直したい人におすすめです。