走り続けることしか許されなかった二人の女性が余白という同じ欠落を抱えて

「走り続けることしか許されなかった二人の女性が、“余白”という同じ欠落を抱えて出会う物語」であることが、静かに、しかし確実に伝わってきます。

特筆すべきは、文体の安定感と密度です。
比喩が多用されながらも自己陶酔に流れず、金融業界・テレビ局という異なる“戦場”を、冷静で知的な語り口で描き分けています。読者は「疲弊している」という説明を与えられるのではなく、疲弊せざるを得ない構造の中に自然と連れていかれる。この点が非常に巧みです。
序盤のエレベーター、オフィス、夜の雨、ヴィンテージカーという流れは、
主人公・紫倉凛羽の内面が“硬い殻→崩れかけ→裂け目→侵入”と変化していく過程と完全に同期しており、物語としての設計が美しい。続きが楽しみです。

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