ビジネスに生きる才女ふたりが、鏡の中の自分と出会った物語です。

 仕事を終えた深夜。電気の落とされた漆黒のオフィスビル。金魚鉢の中に閉じ込められたような豪雨の中で、異世界から忽然と現われたのか、そう思える程の艶めかしいクラッシックなクルマと出会うところから物語は始まります。

 なんつうか、一言で云って上手いですね。
 流れるような文章の世界観が触れる掌に心地よいです。

 張り詰めてヒリヒリと緊迫した仕事の日々。全身全霊を以て泳ぎ抜けてゆく日々の合間に出会した、山間の清水の心地よさ、といったらなんとなく分かってもらえるでしょうか。

 果たして自分は、こんな瞬間に出会したことがあっただろうかと想うコトしきりです。
 やはり求めるダケでは何も掴めませんよね。
 そのためには一歩前に踏み出さねば。

 忘れかけていた某かを、奮い起こしてくれる作品です。

 静謐でありながら、奥底に強い熱を孕んだこの素晴らしき物語が、一人でも多くの方々に読んでもらえますように。

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