【短歌賞10首連作部門】ある剣士が駆け抜けた、青春

チャプタ

ある剣士が駆け抜けた、青春

息を吸う音だけ響く道場に 顎伝う汗 すべてを賭ける


手の豆の熱き痛みよこの腕は すべて記憶す 明日を信じて


一足の踏み込み迷う板の上 右と左がせめぎ合うなり


しんとして己が鼓動の地の底へ 響くがごとく 爪先に立つ


「がんばれ」の声は記憶か押し殺し 瞼の裏の 一点見つむ


極まりて静寂はち切る刹那あり 閃光だけが 天と地を分く


放たれて光となりし一瞬の のちに遅れて 歓声の波


勝ち名乗り受けるも心空っぽの 我が身の上を 夏風が撫づ


自販機の明かりの中に身を置けば 結果は明日 知ればいいこと


陽の光透かすソーダの泡ひとつ 消ゆるとしても また昇りゆく

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【短歌賞10首連作部門】ある剣士が駆け抜けた、青春 チャプタ @tyaputa3

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