
短歌は世界を変える。世界の見え方が変わる。
4,383 作品
10首連作部門
中間選考を突破したファイナリスト10名の10首連作と20首連作を合わせて評価し、
選考委員が受賞者を決定しました。
選考の結果、特例として大賞を2名とし、そのほか佳作2名が受賞となりました。
※最終選考会の記録は、後日サイト上で公開いたします。
20首連作

ろうそくを消すとケーキのにおいする ケーキないのに 前あったから
- 篠原仮眠
蝶の目にわたしたちどう見えている 起き抜けの靴擦れが痛いな
- 由良鴻波
僕らは二人を大賞に選んだ。篠原さんの作品には希望をかたちにする技術が、由良さんの作品には絶望を手放さない勇敢さがあった。二人の短歌は僕らにとって絶対的なものを持っていた。
一次選考のそれを含め、応募作の多くはこの10年の短歌の技術を、良くも悪くもふかく吸収していた。議論はつねに紛糾した。選ばれなかった中にも、見逃されるべきでない一首があったが、僕らはそれに気づけなかった。
いずれにせよ、おまえは短歌をふたたび書く。選ばれても選ばれなくても、書くことはおまえにつよい痛みをもたらす。だが、おまえはそれをする。おまえはすでに、それに取り憑かれている。

最終選考では予選の十首と最終候補の二十首を合わせて評価を行った。ただし比重としては二十首連作の方が判断の高い割合を占めている。私個人は、由良鴻波を一位、甲斐、瀬斗みゆき、京野正午を二位タイとし、選考にあたった。六時間ほどの討議の結果、三人の合意により由良鴻波と篠原仮眠の二人の受賞に決まった。
受賞者への選評についてはひとまず最終選考作を扱いたい。
『respawn』はヒロイズムを核としながらも唯我独尊の世界を描くのではなく、他者性を強く意識させられる一首一首がちりばめられている点に、現代の人間が失いつつある感性と粘り強く向き合った痕跡が残されており、骨太の作品だと評価した。もちろんこうした「あなた」と「わたし」を中心とした主題は決してめずらしいわけではない。だからこそハードルが高いわけだが、しかし作者はそれを超える技術と爆発力のあるフレーズを示した。私はこれらの歌群を、個人のポテンシャルへの評価ではなく、短歌そのものへの可能性を真に秘めたものとして受け取った。
『ミックスピザ・トッピング・チョイス』は言葉の持つ本来的な身軽さ、そしてその裏側に張り付く統合的な怯えのようなものが練り上げられた揺るがない文体で表現され、隙のない一連だった。一首一首に選ばれる名詞は、一見確立された既存の詩情を携えているかに見えるが、プリミティブなつぶやきと組合わさることで日常的な運用とは別の透明感のある手触りが付与されている。また、読んでいてエンタメ的に楽しいと思わされる点も短歌的には特異に感じる。それは思春期を終わらせた語り手を作者が創造しているからだろう。世の短歌のほとんどの語り手は、思春期的である。そこに優劣があるわけではないが、この作者もまた手付かずの短歌の領域を探ろうとする冒険者であるに違いない。
最終選考の十作を読み、今回に関しては三作も四作も受賞の水準にあると感じた。受賞者に限らず応募者全員の今後の活躍に期待している。

カクヨム短歌賞を楽しみにしてくださっていたみなさま、本当におつかれさまでした。長い間一緒に走ってくださり、ありがとうございました。今回の大賞は、圧倒的な完成度と揺るぎない世界観をもつ篠原仮眠さん、そして新しいキャラクターとどこまでもいけるような可能性を見せてくれた由良鴻波さんでした。大賞に誰を選ぶかについてはたくさんの議論が必要でしたが、わたしたちみんなで納得できる結論を出せて良かったと思っています。
選考全体を通して、「短歌は31音しかないのに、何でも書くことができるんだ」と思いました。そしてその「何でも」にまだ含まれていないものが無限にあるのだということも、考えました。それは短歌をやっているあなたが、わたしが今後作り出すのだと思うと、とてもうれしくなりました。書けばはじまる物語があること、それは希望だと思っています。
選考委員は絶対ではなく、賞は通過点に過ぎません。選ばれる・選ばれないに関わらず、あなたはあなたを信じて書き続けてほしい。あなたはあなただけのものさしを見つけてそれを信じるしかありません。孤独だし、つらくなるときもあるでしょう。ですが、その先にあるのはあなたにしか見えない景色です。ありきたりな言い方だけど、その景色を見てみたくないですか?
わたしはあなたの短歌に何度でも出会いたいです。わたしもあなたに何度でも見つけてもらえるようにがんばります。未来でまた、お会いしましょう。
1首部門
選考はカクヨム運営が行いました。
※改行は「/」で表記しました。