神の花嫁として真っ暗な蔵の中へ。そこで出会ったものは……

椿は盲目。叔母夫婦に売られて、桃源郷と呼ばれるほどに豊かな刀根田村へとやってきた。
神の花嫁となるために。
けれど、神の花嫁というには怪しいところがたくさん。
三重もの頑丈な鍵がかかっている蔵は、まるで出してはいけないものを閉じ込めているかのよう。
真っ暗な蔵の中で、椿は神様に出会います。

特筆すべきは、目が見えない椿の描写。音や香りで感じとる様が繊細に書かれていますが、神である朧と触れ合うシーンはうっとりするほどに色気があります。

契約結婚から芽生えた愛という恋愛作品ではあるのですが、神の花嫁という名の生贄である因習や、朧が蔵にいることになった恐ろしい秘密。
さらには大雪が降った日のおかしな声など、ホラー風味もあり、読み応え抜群です。

誰もが幸せに生きたいと願っている。けれど、他者を犠牲にした上での幸福は続かない。因果応報を感じさせる作品です。

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