見えないからこそ鮮明に描き出される、二人の世界

盲目の生贄、椿。闇を抱えた神、朧。
二人が出会うのは、因習村じみた人里の真っ暗な蔵の中……。

物語は、盲目のヒロイン椿の視点で始まります。
目に映る情報がない中で、どうやってお話が進むのだろう?
冒頭から、とても興味をひかれました。

期待に胸を膨らませて読み進めていくと……こ、これは!!

椿は目が見えません。
だから、二人が互いを知り合っていくためには、指先の感覚や寄り添う体温、息遣いなど、視覚以外の情報が必要です。
その一つ一つの描写が美しく、大変色っぽい。
見えないからこその艶めかしさがあり、むしろ映像が鮮明に浮かび上がってくるようで、読みながらドキドキしてしまいました。
そして、妖艶さの間に見え隠れするホラー描写も癖になる……!

また、椿と朧の関係性も尊いのです。
境遇のせいもあり、どこか陰のある二人ですが、互いに影響を与え合い未来に前向きになっていく過程に、胸がきゅんとします。

描写と題材とキャラクター性と……様々な要素が折り重なり生み出された唯一無二の空気にどっぷり浸ってしまう。

作品全体を包む雰囲気が、とにかく魅力的な作品です!

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