主人公の家庭は複雑でございます。
若いうちに母は他界。父は政治家先生で、
幼い主人公のおむつの面倒を見てくれたのは、長兄だったようです。
そのような複雑な幼年期を過ごし、主人公の心も他人とはすれ違うようになって参ります。
具体的に、感情の起伏が少ないそうです。そのことを自覚はしているようですが、それでも他者との関わりに疑問が生じます。
ある日です。
そんな感情の起伏の少ない主人公のことが鼻についたのか、空手部の生徒に目をつけられて、因縁をつけられてしまいます。
その場は先生が駆けつけ、しかも主人公は、空手部部員のポケットに、よろしくないものを忍ばせます……
彼は少年院送りになりました。
生まれた環境が環境だったために、この主人公の育つ環境も特殊なものでした。
この頃になるとお兄さんはエリートの警官になっているのですが、
子宝に恵まれません。
よって、姉嫁が子作りをするのは、兄の弟である主人公……。
ままならない事情を抱え、それぞれが葛藤や矛盾を抱えながら世界は今日も回る。
感情の起伏のない彼に、最後に残った感情とは……。
まるで映画を見ているかのような30分間という経験にございました。
お勧めいたします。
ご一読を。
壊れた家族から生まれるものは、壊れたものなのかな?
というのが、読んだ直後の感想です。
主人公は赤ちゃんのときから、冷静にまわりを見ていたし、感じていた。
主人公は感情が希薄な人物として書かれていますが、決してないわけではないことが、学生時代のエピソードから読み取れます。
もしかしたら反対に、感情が豊かすぎたのでは? そして、賢すぎたのだろうと私は思いました。
赤ちゃんのときに感じた世界。その感じたものが欠損していたがゆえに、生き延びるための術として、感情を押し殺し、冷静に世界を見ることを選んだ。
主人公のおむつを替えてくれたのは、兄。主人公は兄に愛情を感じ、尊敬していた。主人公にとって兄は、自分を直接世話してくれた唯一の家族であり、特別な存在。
主人公が一番家族を求め、家族であろうとしたのかもしれない。
けれど他の家族にとって、家族とは形式でしかない。そこに主人公も合わせたのだろうと思います。
未成年にとって家族とは、生存に関係するものだから。
血が通っていないような家族に合わせることができたのは、主人公にも他の家族と同様の気質があったからだろうと思います。
これらは私の感想であって、作者である雨さんの意図とは違うかもしれない。
けれど、読者一人ひとりが想像し、考え、ああじゃないかなこうじゃないかな。そういえば自分の中にもこんな部分がある。
そんなふうに幅広く考える余地があり、結末も捉え方で変わってくる作品です。
ダークミステリーよりも「サスペンスホラー」と呼びたくなるような作品ですね。
感情の欠落した「僕」の一人称で進みます。
欠落したドライな感情を、丁寧に一文ずつ書き連ねていき、結果として「怪物」と思わせるような〝凄み〟を感じさせます。
論理(ロジック)だけで進めていくところに現実味(リアリティ)を感じます。
このような〝凄み〟を描いた小説は、読み手に多くの示唆を与えます。
ぜひご一読して、「怪物」の心理や、最後の一文から「怖さ」を感じていただきたいですね。
同氏の作品の中では群を抜いた小説であり、おそらくターニングポイントとなる話でしょう。
これからの飛躍を感じずにはおれません。
ダークミステリー作品で、冒頭から衝撃的なシーンで始まります。
ただ、それは血がぁとか、描写がグロくて~、とかじゃなくて、「この年の子供がこういう行為を……?」という意外性と、その内容の独自性で衝撃を覚えます。
この作品の主人公は、一言で言うならサイコパスなのかな?
賢いけど勉強はしないから成績は悪い。だって、暗記するだけの勉強に意味はないと思っているから。
そういう斜めに構えた主人公です。
短編なのでテンポ良くストーリーが進んでいきますが、その展開が読めないのなんのって。
「こうきたか!」
ってゾクゾクします。あまりの意外性に心が躍ります。
そして、主人公が見せる狂気に心が震え、先を早く読みたい。更新を早く……! と渇望してしまいます。
この作品は短編で終わらせるのは勿体ないです。是非とも長編で腰を据えて読みたいです。