唄われる者たちへ

静かな山村で、兄ジオと弟レイニィは穏やかな日々を過ごしていた。
人より少し喋るのが遅く、でも花や小鳥と話すように心を通わせるレイニィは、兄ジオの大切な存在だった。

ある日、ささやかな魔力訓練の最中に、レイニィの中で“何か”が目を覚ます。
魔法陣が暴走し、竜の像が光を放つ。浮かび上がる幼い身体。背に現れた、幻のような金色の翼。

「竜に、選ばれたのよ」

そう告げるのは、村の古き魔術を継ぐ賢女。
これは祝福か、それとも――災厄の兆しか。

弟を守りたい。ただ、それだけだった。
けれど“その力”は、誰かの命を奪ってしまうかもしれない。

魔法の才能を持たない兄ジオと、圧倒的な力に選ばれた弟レイニィ。
戦争の足音が忍び寄る中、兄弟は“守る”という願いを胸に、それぞれの運命に立ち向かっていく。

…続きを読む