物語の最初の方は、受験生の葛藤がテーマなのかと思いながら読み始めました。 読み進むうちに、さまざまな背景をもつ登場人物が増えていき、らせん状に絡み合いながら進んでいく構成に引き込まれました。 また、地の文の語りも、各話ごとにバトンリレーのように受け渡されていて、その語り口で誰が語っているのかが自然に伝わる、書き分けの巧みさが印象に残ります。 誰かを思う気持ちや、関わろうとする優しさが、時に誤解や孤立を生み、複雑な人間の機微が丁寧に描かれているところも心に残りました。
終盤の展開はさらに一層輝きを増し、「生きる」ことを改めて考えさせられる物語でした。そして、ラストに描かれた「とても小さくて、とても大きな約束」が、静かな余韻として心に響きます。
長編のご執筆、本当にお疲れさまでした。
素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました。