孤独に光を、言葉に力を――『人を知る』物語に寄せて
- ★★★ Excellent!!!
静かな孤独の痛みと、それを包み込むささやかな温もり――この物語は、読む人の心の奥底までそっと光を差し込んでくれるようです。天札詠の〈グラトニー〉という異能は、現代に生きる私たちの繊細な感受性とどこか重なり、他者の言葉や想いを真っ直ぐ受け止めて“咀嚼”する姿に、ただの能力バトルを超えた深い余韻を感じさせます。
学園という舞台で描かれるのは、痛みも希望も静かに滲む人間模様。蠍會の歪んだ正義と、詠たちの「理解し合いたい」という静かな願いが、優しくも確かな対立を生み出し、読み進めるほどに胸の奥がじんわりと熱くなります。敵として現れる者たちもまた孤独や過去を抱え、誰もが自分だけの正義や救いを探して生きている。その等身大の苦しみや、救いを求める切実な姿が、どこまでも愛おしく思えてなりません。
ひとりの少年が「人を知る」ことで自分自身を受け入れ、仲間と歩み始めていく――その歩みの先に待つ新しい夜明けを、大切に見届けたくなることでしょう。