第49話 新「    」







「本当に行くの?」


「あぁ。この力はもっと役に立つ。・・・それに金になる。ミナは安心して進みたい道を言ってくれよ。学費は俺に任せてくれ。」


 アラタは巨大な剣をステータス画面を開いて収納すると、ミナの方に体を前に向けたまま顔だけこちらに向けて言う。


「・・・でも──いや、確かにそうだね。」


 不目根田町がダンジョン化し、即日にクリアされた日から──母親の誕生日から数ヶ月が過ぎた。



 アラタは、結局学校を辞めて世界各地のダンジョン攻略やモンスター討伐に挑むことに決めた。


 不目根田町でのアラタの活躍は、あの時その場にいた町民全員が見ていたこともありすぐに戦力を求める「とある機関」に伝わることとなった。


 その機関はアラタに多額の報酬を与える代わりにモンスター討伐やダンジョン攻略の依頼をしてくる。


 アラタはもう生計を立てられるようになった。


 しばらくの間は不目根田町の実家──ダンジョン化によりなくなってしまったので今は仮設住宅になっている──から飛び回って国内中の討伐依頼を請け負っていたのだが、機関はさらに高額な条件を提示し、世界中のダンジョン攻略とモンスター駆除の依頼をしてくるようになったのだ。


 不目根田町から出てこれからは活動することになる。ミナや母親と離れて。


「寂しくなるな・・・でもまあ、いつか来ることだし、しょうがないよな」


「・・・だね。───たまにでいいからまた帰ってきてよね」


「あぁ。」


 ミナとアラタは玄関をでて朝日が登ろうとする不目根田町を二人で見渡す。


「お父さんは?」


「まだ帰って来れないって。」


「ははっ これじゃ父さんが帰ってくるのを待つより、俺から父さんに会いにいったほうが早いな」


 不目根田町に朝日がさす。


「もう時間だ。じゃ。」


「うん。またね!アラタっ」


 短く別れの挨拶を済ませると、アラタは圧を少し解放し、町の上方へと飛び去ってゆく。


 不目根田町がダンジョン化してからもう何回も見てきた光景だが、それでもミナはまだこの光景になれなかった。


 人が映画の中のスーパーヒーローみたいに飛んでいくのだ。しかもあのアラタが。


 ───人って・・・人でも飛べるようになるんだね。


「私もいつか飛べるように頑張るよ!」


 ミナは誰もいない朝日に向かって独り言を言うと小さな仮設住宅へ向かって歩いてゆく。


 これから、頼りない母親の分も朝ごはんを作って、その後学校へと行かなければならない。


 ミナは朝日を背に体を伸ばしながら仮設住宅のドアを開け、その中へと入っていった。

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