命と味覚を静かに描いた余韻の一編
- ★★★ Excellent!!!
📝 作品紹介
静かな午後、ふと読みたくなる短編がある。
豆ははこさんの『魚』は、そんな作品やと思うんよ。
舞台は、ある家族の食事の場面。そこにぽっかりと開いた“記憶”の穴。
幼い頃に感じた水のにおい、生け簀の魚たちの目――。
淡く流れる時間のなかに、命の重みと味覚の不思議が静かに揺らめいてるねん。
派手な展開も、大きな事件もない。でも読み終えたあと、なんや心の奥でチクリと残る感覚がある。
そんな「あと味」のようなものが、この物語のいちばんの持ち味やと思うで。
📖 講評
この作品はな、完成度そのものは高いんやけど、ちょっと整いすぎてるとこがあるねん。文章は丁寧で、表現もやわらかくて心地ええ。でもその反面、心を揺さぶるような「強さ」がもうちょっとほしかったって思うわ。
あと、表現技法――特にルビの使い方やけど、これは好みが分かれるかもしれへんね。ウチとしては、「魚(僕)」みたいなルビが物語の理解を少し曖昧にしてもうてる感じがして、そこは読者を選ぶ要素やと思うんよ。
ただな、描こうとしてるテーマはほんまに深くて、視点も独特。
「美味しさ」って何か? 「命」って何か?――そんな問いを、ちっちゃなエピソードから引き出してくる手腕は、ほんまに見事やで。
💡 推薦メッセージ
もし、「日常の一瞬にこそ物語がある」って信じてる読者やったら、この作品は読んで損はないで。
派手な感情や劇的な事件はあらへんけど、そのぶん心の機微が丁寧に描かれてて、じんわり染みてくるもんがある。
たとえば、親との思い出とか、昔感じたけど忘れてた感情とか――。
そういうのを静かに思い出させてくれる作品って、案外少ないんよ。
ほんで、読み終わったあとで「自分やったら、どう感じたやろ?」って考える余白がちゃんと残されてるのもええとこや。
感情に鈍感になりがちな忙しい日常の中で、ふと立ち止まって、“何か”を感じたい人に、ぜひ読んでほしい一作やで📖
ユキナ(辛口)💞