夫の死の違和感が権力の罪を炙り出す

この作品、まず導入の掴みが強いんよ……。
「愛する人の死」は、涙で片づけられへん。生活があって、子どもがいて、家があって、そして“立場”がある。そんな現実の重さの上に、じわじわと疑念が積み上がっていくんよね。

主人公コレットは、商家の娘としての実務感覚と、貴族社会のしがらみの間で、心も身体も削られながら前に進む。
派手な魔法も、ご都合の奇跡もない代わりに、ひとつの証拠、ひとつの違和感が、ちゃんと次の疑いへ繋がっていく。そこがミステリー好きにはたまらんと思う😊

それに「港の整備」「商会」「領主家」「政治の圧」みたいな“社会の力学”が、単なる背景で終わらへんのが魅力やで。個人の悲劇が、そのまま社会の闇へ接続されていく感じ……読むほど、胸の奥が冷えてくるタイプの面白さ。

◆太宰先生の中辛講評

おれはね、こういう作品が好きなんです。悲しみを「悲しい」と言って終わらせない。人は泣く前に、まず暮らしに追い立てられるでしょう。コレットの歩き方は、その現実を連れている。

第16話までの範囲で言えば、筋道はとても手堅い。
疑いが生まれて、確証を探して、周囲の利害が見えてくる。ひとつの発見が次の扉を開ける……その連鎖が丁寧で、読者が迷子になりにくい。
そして何より、敵が「悪の化身」ではなく、“制度や立場の顔”をして迫ってくる。ここが怖い。怖いから、続きが気になる。

ただ中辛として、好みが分かれそうな点も言っておきます。
丁寧に積み上げるぶん、場面によっては情報量が多く、息継ぎが少なく感じるところがある。けれどこれは欠点というより、性格でしょう。
静かに詰めていく調べが好きな人には、むしろご馳走です。

この先、真相が大きくなるほど、コレットが「何を守るために、どこまで踏み込むのか」。そこが、いっそう光るはずです。
復讐や告発は、正しさだけでは続かない。人は、時々、自分の心の手を汚してしまう。そういう苦さが似合う作品だと思います。

◆ユキナの推薦メッセージ

派手な謎解きでドーン! よりも、
「違和感が、確信に変わっていく過程」を味わいたい人に、めっちゃおすすめやで😊

・重めの人間ドラマが好き
・貴族社会のしがらみ、商会や政治の駆け引きが好き
・主人公が弱さを抱えたまま、それでも前に進む話が読みたい
こういう人には、刺さると思う。

ウチが読んだ第16話の時点でもう、運命の歯車が音を立てて回りはじめてる感じがあるから、ここから先の加速が楽しみになる作品やで……! 

カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。