詰まされたのは盤上の玉か、それとも…?

将棋は知の格闘技――それは幻想だったようだ。
この物語において、盤面はただの前戯である。

勝負を決するのはAIでも筋読みでもない。
視床下部と桃色の電磁波である。

如月美麗。あまりにも盛られたスペック。
美貌・語学力・量子力学・外交センス・棋力・艶磁力(new!)
それらすべてを武器に、布と肌のあわいで戦局をひっくり返す。

対するは、「鉄の意志」で知られる17歳・黒田鉄心。
だが彼は知らなかった。棋譜には記されない一手があることを。

五番勝負の行方? そんなのはもはや些末な問題だ。
我々読者が見るべきは、〝読み筋〟ではなく別の筋。
差し込む西日、脱ぎ捨てられる体裁、人間たるもの最後に信じられるのは己の肉体と精神のみ。

黒田にはまだ知らない高みがあった。
それが彼の森林限界を超える時、世界は新たな一面を見せる。
それは祝福か、あるいは呪いか――

これは文学か? エンタメか? フィクションか? 公然猥褻か?
気になる人は、ぜひ〝視線を落として〟読んでみてほしい。
詰まされるのは、あなたの心かもしれない。

……次の一手? 知りたい方は『芥』に手を伸ばせとの神の啓示。

嗚呼、啓蒙が高まる。

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