言葉の裏に流れるもの
- ★★★ Excellent!!!
珠玉のジュブナイルです。
作品タイトルを見たとき、ふとした先入観が浮かぶかもしれません。
でも、それを抱いた瞬間から、あなたもまた
この舞台の“演者〟のひとりです。
主人公の少年の視点で描かれる世界には、
何気ない偏見や無理解、蓋をした憧憬、罪悪感――
大人の日常にも通底する、答えの見えない問いや、掻き消されてしまう声が、
少年特有を曖昧さも伴いつつ、鮮烈に捉えられています。
そして作者様は、カメという寓話的なモチーフを通し、
それらエッセンスをあくまで柔らかく、説教じみることなく、
静かに、やさしく、笑いもまじえながら、
差し出してくださいます。
ペンネームに託された想いが透けて見えるような、一作。
タイトルの言葉、英介少年の言葉、その裏に流れるものに、
想像力を、ひとひら――。
ぜひ、その目で確かめてみてください。