陸遜の壮絶なる最期、怒りと絶望が織りなす底冷えするほどの読後感!
- ★★★ Excellent!!!
三国志での陸遜について、一般的に夷陵の戦いで劉備を破った、若き俊英のようなイメージをされる方が多いと思います。この作品での陸遜は、呉の末期の頃――孫権との関係が破綻していた頃の物語となります。
作品の見どころとして、構成の素晴らしさがあったように思います。登場人物は陸遜、孫権からの使者で、孫権は出てきません。使者は孫権の理解しがたいお気持ちを代弁します。そして、陸遜は孫権への憤りを深めていくのです。修復できないほどの関係性の破綻を見事に表現されていました。
陸遜が憤る気持ちの表現に圧倒され、終盤に向かうにつれて鳥肌が立つ感覚がありました。熱や汗という言葉がしきりに登場しますが、読んでいて感じたのはひたすらに冷え切った思いでした。
三国時代というと、黎明期や三国鼎立の頃ばかりが有名ですが、末期の頃も掘り下げるべき物語があるかもしれないと感じさせてくれた作品でした。