天網恢恢、疎にして漏らさず

人ならざるもの力を専横するようになった人間の顛末と末路を描いた物語です。

天の則を外れたように常に豊作の齎される中ノ村。
その村へ旅の薬屋が訪います。

奇妙な風体の薬屋は〝クスノキのりん〟と名乗ります。
何故に薬屋は、この村へ来訪したのか。

中ノ村を仕切る次丸の心の内とは。
言葉を発しない娘、梔子が村長の家に居る理由とは。

深く蔵されてた秘密と絡み合った人間の思惑は、やがて一つの臨界を迎えます。
多くの謎が露わとなったとき、この村に陽や雨の恵みが絶えることのなかった理由も詳らかになるのです。

まるでミステリーのように謎の開かれゆく愉悦と怪異譚の暗い悦楽が合わさった本作。
読む者は特異で極上のエンターテイメントを堪能できることでしょう。

〝旅の薬売り・薬屋りんシリーズ〟の第一作でもあるこの物語。

読まずにいるなんて、もったいない。


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