孤独という心の水面に投げ込まれた石は、どんな波紋を広げるのか

思慮深く、どこかアンニュイで、強く、同時にあやうい。女のいろんな面を併せ持つヒロインが素晴らしく魅力的です。
後宮という特殊な場所で貴妃として君臨する主人公の淑華は非常に賢明で知的な女性ですが、この場所で二十年という年月を過ごしてきたひとりの女の哀愁と諦観がつきまとい、虚しさや孤独を抱えながら表面だけは静かに凪いでいる水のような印象を与えます。
しかし、流刑地から戻った第二皇子の登場が、まるで水面に投げ込まれた石のように彼女の心に波紋を起こし……。
機知に富んだ会話の妙と、男女の機微が丁寧に描かれる文章。そこにミステリの要素が絡まり、愛憎が渦巻く後宮の世界に引き込まれます。
孤独な女の心に起こった波紋はどのように広がっていくのか。帝や後宮の女性たちとの関係は。そして皇子が流刑されるきっかけになった事件の真相とは。
各章のエピソードを繋ぐ詩のようなタイトルにも、ヒロインの心情を綴る作者の細やかなこだわりを感じます。華やかで妖しい東洋の美が散りばめられた恋愛文芸です。

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