悲しき一族が、今まさに終焉を迎えようとしている
- ★★★ Excellent!!!
これは悲しい一族が、いよいよ終焉に向かいゆく壮大な物語であると同時に、一人の女性が強い決意に至る“個”の物語でもある。
その一人の女性・雪江は、「櫻岾奇談」では“死者”であったが、本作では“生者”として描かれる。
「櫻岾奇談」から読んだわたしとしては、非常に感慨深いものがある。
不満・怒り・絶望・希望。
様々な感情を抱き、人間として、そして『護摩御堂家』の当主として生きた雪江の姿が、ここにはあった。
「櫻岾奇談」では恐ろしく、怖がらせる存在であった雪江もまた、在りし日は一人の人間であったことが伺いしれる。
「櫻岾奇談」と先ほどから連呼している通り、本作は著者の作品「櫻岾奇談」に関連した作品である。
しかし、短編ホラーの物語として、十分に成立した魅力的な作品となっている。
どちらを先に読んでも良いと思うが、もし本作を読んだのであれば、「櫻岾奇談」も読んでいただきたいし、「櫻岾奇談」を読んだのであれば、本作も必ず読んでいただきたい。
そうすることで、著者の描くこの怪奇に満ちた呪いと呪の世界は、より明確な像を結ぶだろう。