抗い難い運命と因縁に立ち向かわんとする、一人の女性の姿がここに──。

呪われた一族でありながら子をなすことは、合理か、非合理か。
それとも、そんなことを考える必要などないほどに、それはただ連綿と受け継がれてきたのかもしれないし、抗いがたいほどにそうなってしまうのかもしれない。

これは、護摩御堂桐枝の物語。

他の作品では街に鉄道を敷いた事業家、また別の作品では過干渉な母親として描かれていた。
しかし、彼女もまた、累々と受け継がれてきたこの呪われた一族に終止符を打とうと、人生をかけて挑んだ一人の人間であった。

抗い難い運命と因縁に立ち向かわんとする姿は、それまで抱いていた印象とはまた大きく異なる、とてつもない意思の強さを感じさせる。

さまざまな話でしっかりと脇を固めていた彼女であったが、十分に主役足りえる人生を送っていたのだ。



ある話では脇役であったものを、主役として立派にその生きざまを描いて見せてくれる。

誰一人として、脇役として生まれたものはおらず、皆がそれぞれの人生の主役として生きる。
まるでこの世の人々そのもののようだ。

著者の想像力と文才に、脱帽せずにはいられない。

その他のおすすめレビュー

櫻庭ぬるさんの他のおすすめレビュー135