まだ山が生きていたころに始まる物語
- ★★★ Excellent!!!
「世界創造の余熱」が残り、「誕生のプロセスにはまだ柔軟性があった」時代。
「唆し拐かし血を流す悪意の風」が世界を巡っていました。
その邪悪な風が、見たことを歌にして騙るという、神話のような物語です。
私は、第2話の「赤い子」が一番好きです。
「俺は異形なのにぃぃっ」という叫びに胸を抉られました。
彼の誕生のプロセスも好きです。
第3話「悪食」も好きです。
乞食や村の女性たちのキャラクター、世界観が良いです。
昔話や神話にありそうな世界観ですごいと思います。
第4話「※※※」からは、この物語の本筋が始まります。
醜い姫様のお話です。
姫様の邪悪さと哀しさ、侍女の「塩辛い」という名前、赤い子に真珠を吐き出させるために海の話を聞かせること、どれも好きです。
悪意に満ちた黒い宮殿で、ただひとつの清らかな言葉「一緒に海に行きませんか」には胸を打たれました。
本筋ではないけれど、風見鶏に恋した鶏のエピソードも好きです。
世界観とストーリーに圧倒されました。
現在とは理が異なる時代のお話を作れること、本当にすごいです。
日八日様にしか描けない、神話らしい不条理さが大好きです。
圧倒される物語をありがとうございました。