静かな感動と共に、たゆたう桜の季節を思わせる和やかな余韻がのこります

本作は、江戸時代の城下町という舞台設定のもと、医師という家業と文学の志のはざまで生きる宣長先生、その懐深い人柄と人間味が見事に描かれています。

物語は日本古典へのリスペクトが濃く、物語が進むごとにその美学が端々に現れます。
先生が咲き誇る山桜を前に詠む和歌――桜は大和の美、日本人の心に染みる象徴として描かれ、古典から現代へ繋がる情感の連続性を感じるのではないかと。

地の文には旧かなづかいや時代語が巧みに織り込まれ、現代日本語とは異質のリズム感が心地よく、時代の空気を鮮明に感じさせます。

江戸時代や古典文学が好きな方はもちろん、人の心の機微に触れたい方に心からおすすめしたい一作です。

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