物語は、CIAに所属する凄腕職員、グレンの視点から始まります。10年前に起きたホテルの爆破事件で、彼の娘である花澄が行方不明(MIA)になりました。彼は心の傷を負いながらも立ち直り、日々の職務の合間に娘の手がかりを探す真面目なパパです。
そしてもう一方の視点、謎のウサギマスクを被る凄腕強盗犯、フェリクス。彼はあるときひょんなことから記憶を失った少女ミアを拾います。彼は不器用ながらも、周りの助けを借りつつ、父親代わりとしてミアを15歳まで育て上げます。
物語はこの2つの視点から流れ始め、やがて少女を中心に渦をまいていき――。
犯罪組織や強盗犯などをモチーフとした所謂クライムアクションであり、出てくるアクションシーンのひとつひとつに非日常の緊張感と爽快感が味わえます。
周囲を彩る数々の登場人物たちに日常・非日常の背景があり、それぞれの人生で生き生きとした様子が丁寧に描写され、読んでいてとても引き込まれます。
一方で、全国のパパさんに向け、私はこのお話を特におススメします。
グレンの娘・花澄に対する想いや葛藤、フェリクスと少女ミアとの絆、そして思わず抱きしめたくなるくらいのミアの天真爛漫な魅力がこの話の持ち味です。
彼らの心の変化や関係性の変化、その起点となる背景が、視点を変えて多面的に表現・開示されていき、物語を深く立体的に楽しむことができます。
特にお子さんのいらっしゃる男性なら、一度は経験するであろう『父性の芽生え』や、『子供の成長のうれしさや寂しさ』、そういったものを大きな感情の波とともに思い出させてくれると思います。
一人の娘を巡り二人のパパ?が激突する物語、おススメです!
2026年アカデミー作品賞受賞作『One Battle After Another』を思わせるのは、"娘を追う父"というモチーフの切実さだ。『M.I.A.』もまた、その喪失と執着を物語の芯に据えながら、裏社会を舞台にしたクライムサスペンスとして、アメリカ映画を観るような緊張感のなかで展開していく。
本作がただの救出劇にならないのは、取り戻すべき娘と、ミアとして生きてきた少女が、同じ一人の人間だからだ。グレンが花澄の名を呼ぶ切実さと、少女がすでに別の名で積み重ねてきた時間と、その両方が本物である。だから再会の場面は感動的であると同時にひどく残酷で、どちらかが嘘だとは言い切れない。
グレン側の喪失と執念、フェリクス側の罪と情愛。並行して描かれるその二つは、読者から「正義はこちら」という逃げ場を静かに奪っていく。任務、裏切り、襲撃、サスペンスとして十分に機能しながら、物語の中心にはずっと、この少女はどこへ帰るべきなのかという問いが残る。
それこそが、この作品のポイントだ。
十年前に幼い娘をホテル爆破事件で失ったCIA工作員グレン。
きっと生きていると信じて探し続けた愛娘は、犯罪者によって助けられ、多くの愛情をもって育てられていた……。
これだけでもう、父子が再会した時にどうなるのかハラハラしてしまう内容です。
しかし、この物語のすごいところは、その肉付けが半端なくアメリカンで、どの場面も違和感なくハリウッド映画を彷彿させるところ。
日本人が書く海外ドラマは、どうしても日本人的な考えや雰囲気が滲む瞬間がありがち。
でも、この作品にはそれがないのです。
小物や風景、台詞回しひとつでも、一度は見たことのあるハリウッド映画の場面に置き換えても遜色ありません。
おかげで、没入感を損なわないまま、仕掛けられたドラマに夢中になって読み進めてしまいます。
二人の庇護者は、警察と犯罪者。
しかし、どちらも真実少女を愛していて、読者は簡単にどちらかを応援出来ないでしょう。
生き別れの父と娘は、果たして望むべき再会を果たせるのか!?
一本の映画を観たような満足感。
いや、これホント映画ですよね!?
ぜひとも手に汗握る興奮を読んで味わって頂きたいと思います。
オススメ致します!
CIA工作員グレンは十年前、ホテル爆破事件により幼い娘——花澄を失っている。
しかし、彼女は記憶を失ってはいたものの、生きていたのであった。
なんと、犯罪組織の一員のフェリクスという男の元で。
「ミア」という名を与えられて……。
アクションシーンも、それから食事のシーンなど日常の一コマもアメリカっぽい雰囲気たっぷりに緻密に描かれ、まるで映画を見ているかのような臨場感と迫力、没入感を感じられます。
洋画のノベライズが結構好きなんですが、まさにそれです。
サブキャラや悪役や、細かな生活感もひとつひとつ丁寧に書き込まれているにもかかわらず、ダレることなくテンポ良く本一冊分に見事に収まっています。
皆さんも、ぜひこの読む洋画を楽しんでみてください。
心からおすすめしたい一作です。
てか知識に乏しく、クライム・アクションとは何ぞや、てな状態だったので、まずは読む前に検索してみたんですよ。人はわからなければ検索するんですよby平野啓一郎。
AIが教えてくれることには「その名の通り『犯罪(Crime)』をテーマにしたアクション作品のことを指します」とな。
わかったような、わからないような。
そもそも、読み物なのにアクションてのがよくわからん。
と思いながら読んでみたら、
わかりました。
そうか、これが、これこそがクライム・アクション!
他の人のレビューにもあったけど、映画それもアクション系洋画を見ている感覚。それを文字で味わえる。まさに声に出して読みたい日本語、の洋画!
て、この表現では伝わらないでしょうけど、読めばわかります。
これこそが、クライム・アクションです!!
最高にクールな作品です!
……なんて月並みな言葉を最初に持ってきてしまいたくなるほど、始終「カッコいい〜!」と叫びつつ読み進めました。
レビューって、気合を入れてちょっと気取った文を書きたくなってしまうタイプなのですが、この作品には気持ちが抑えきれず「アツいー!」とか「好きー!」とか、ストレートな言葉が真っ先に飛び出してしまいます。
なにせ、作品の隅々にまで見どころが詰まっているのですから!
まるでハリウッド映画のような会話劇やアクションシーン、ご飯や街並みといった日常の小道具たち。まさか「洋画のノベライズ?」と思うほどの没入感で、鮮明な映像が目の前に浮かんできます。
キャラクターたちも個性的で魅力的。社会的に見れば彼らの善悪はハッキリしているかもしれません。ですが読者目線では、一人一人にちゃんと正義が感じられ、悪事をするにもそうならざるを得ない環境があったりもして。
そして双方の信念がぶつかり合う場面は特に……もう激アツです!
これ以上語るとネタバレを誘因しかねないので、この辺りで抑えておきたいと思います。
ハリウッド映画がお好きな方も、あまり馴染みはないけれど興味はあるよという方も、とにかく多くの方にお読みいただきたい素敵な作品です!
(あと、映画化をよろしくお願いします!)
ハリウッド映画はお好きですか?
2000年代に入ってからのVFX乱舞ではなく、90年代ぐらいの、使っても極一部で生身スタントとSFXやってた頃の体当たり的な映画。本作は、あの頃を彷彿とさせました。
ネタバレ無しなので、色々と割愛しますが、お話の柱はグレンというCIAの工作員と強盗を生業としている犯罪者、フェリクスから成り立ちます。
まさに水と油。本当なら、捕まえる側と逃げる側、ちょっと血腥いトムとジェリーの様相と呈しますが、この柱の間に一人の少女が割って入ってしまって、さぁ大変。
何しろこの少女、グレンにとっては10年前、行方不明になってしまった愛娘。フェリクスにとっては拾って育て、愛着を持ってしまったがゆえにやっぱり愛娘。
その二人にとっての愛娘も、義父であるフェリクスに親以上の愛情を向け始めるお年頃──ってな形で始まる本作は、読んでいるとやっぱり洋画を思い出します。
とは言え、洋画でありがちな本筋の最中、思い出したかのように追加する家族愛要素ではなく、最初から本質的にそれを主軸としているので違和感がなく、且つアクションもきちっとこなしてくれるのでちゃんと世界観に馴染んでいるのが素晴らしいところ。
完結済みですので、今夜一本映画見たいなぁ、という気分になったら是非どうぞ。オススメです。
『一本の映画を書いてみる』という作者の言の通り、とても映画的な展開であり、読み終わった後に一本のアクション映画を見終わったような満足感がある。
お話はマウンテンと呼ばれる悪党を中心としたアクションと、ミアと名付けられた記憶喪失の少女を中心とした男二人による取り合いがキモとなるのだが、そのどちらもしっかり楽しめて、『こういうのが欲しいんだよ!』という勘所を抑えてくれるので読み手としても気持ちが良い。
アクションパートでは海外映画のドンパチが派手に展開される。
しょっぱなから犯罪者の大捕り物、中盤、終盤でも派手にアジト襲撃を行ったりするので随分と映える展開になっている。
派手な展開でも地の文による描写が細かく、読み手に映像を想起させるように導いてくれており、まさに脳内で映画を流し続ける気分で読み進められた。
地味ながら小物に至るまで描写が映画的というか、欧米的というか、お話の合間につままれる食べ物一つとっても、テレビで放映されている番組一つとっても、しっかりと世界を感じられる描写になっているのがとても良かった。
没入感という点で言えば、抜群の描写であると言って良いだろう。
アクションパートだけではなく、ミアと名付けられた記憶喪失の少女をめぐる男の争いに関しても、こっちはこっちでドキドキさせられる。
記憶を失う前のミアーー花澄を探している父親グレン。
ミアを拾い大切に育て続けてきたフェリクス。
二人の男に挟まれ、揺れる少女。
タイトルに『M.I.A.』とされるだけあって、『行方不明』となってしまった『ミア』の存在がお話に大きく関わり、グレンとフェリクスの二人の運命をも左右することになる。
ただしこれは『父親が娘を取り戻す/守る』話では終わらないという事だけは付記しておきたい。
総合して『しっかり読みたい部分、期待した展開を抑えてくれる上、予想外の展開もある』という、まさにお手本のような映画展開の一本。
エンタメ小説としても楽しめるし、作者の積み上げてきた地力というモノも窺える。
文章量もおおよそ文庫本一冊分という、サクッと読めるサイズなので手広くオススメ出来る作品かと思う。
保紫奏杜さんと言えば高い文章力とリアリティのある人間ドラマが売りのひとつですが、本作もその期待を裏切らないものになっています。
ネタバレ無しなのでストーリーについては伏せますが、今回は現実のアメリカが舞台の臨場感のある物語で、ハードなガンアクションが冴え渡り、ついでに爆弾が猛威を振るいます。
中盤以降はずっとハラハラする展開が続きますので、読者は目が離せなくなることでしょう。
これは作者様の特徴のひとつですが、いつもどおりサブキャラや悪役まで魅力的に書かれていて、それがより一層世界に愛着を湧かせて最後まで――いえ、終わった後も、この世界を見ていたいという気持ちにさせてくれるはずです。
今回はとくに一話分の分量が適切で読みやすいので、まだ読んでいない人は少しずつでも読み進めて欲しいです。総じてレベルが高いので小説の書き方を勉強したい人にもオススメですよ。
本作の視点人物は二人、グレンとフェリクス。
グレンはCIAの捜査官で、爆弾魔の事件に巻き込まれた娘・花澄を失っている。
一方フェリクスは爆風に巻き込まれて記憶を無くした少女・ミアと暮らしている。
このあらすじを読むと、ははーん、フェリクスが爆弾魔でグレンの娘の花澄をミアと呼んで一緒にいるのか、と展開を予測するだろう。
でもはたして、この物語はそんなに単純な構図なのだろうか…
とにかく二人の視点人物の描写が緻密で、その世界観に引き込まれます。
そして、
果たして花澄はミアなのか?
フェリクスは爆弾魔なのか?
爆弾魔が次に何をやらかすのか?
などの疑問が物語に緊張感を与えます。
この秀逸なサスペンスミステリーを、一緒に読み解いてみませんか?
Chapter6第4話を読んだところでレビューを書いています。
CIA工作員グレンは爆発事故で行方不明になった娘を探している。実は娘は生きていて強盗犯に育てられていた。
一人の娘と、二人の父親。どちらも命に代えても惜しくないほどの愛情を娘に注いでいる。その二人が出会い、反目しながらも手を組むことになった。何故なら……。
「これ、ハリウッド映画の原作だったかな」
読んでいて本気でそんな錯覚を覚えてしまいました。リアルな場面設定と人物描写で、映像がバンバン頭に浮ぶんです。それも単なる映像ではありません、ハリウッド映画そのものの、迫力ある映像がです!
物語は佳境を迎え、ヒリヒリする場面が続いています。どうか、ハッピーエンドであって欲しい!そう願いながら物語を追います!
あなたも一緒に如何ですか?
CIA工作員グレンと、〈穴蔵破り〉こと強盗団のフェリクス。
二人の父親が、ミアという少女を巡って対立する物語。
文章力とストーリー構成は折り紙付き。
本作でおすすめしたいのは、登場人物たちの心の機微の描き方です。
ある事件により記憶喪失となった少女、ミアを育てるフェリクス。
犯罪者でありながら血の繋がらないミアを育てる男。
その不器用ながらもまっすぐな愛情を注ぐ姿。
記憶喪失となるも天真爛漫に育ったミア。
その屈託ないミアを見れば、フェリクスの愛情もわかります。
育ての親であるフェリクスや周囲の人物への朗らかな態度は見ていて楽しい。
ミアがフェリクスに向ける親愛の笑顔が意味するもの。
ミアの実父であるグレンは、事件以後も諦めずに娘の存在を捜索している。
職務に忠実で質実剛健なグレンは、家庭ではやさしい父親。
グレンが追い求めた娘と再会したとき、どのような感情を抱くのか。
豊かな語彙で丁寧に人物の心情が描かれていて共感しやすい。
安らぎや悲しみ、困惑や怒りなど色んな心の表情を見せてくれる人物たちの物語を見届けてほしい作品です。
ホテルの爆破事件に巻き込まれ、娘を失ってしまったCIA工作員のグレン。
惨劇の現場から遺体は見つからず、その死を受け入れられぬまま、無情にも十年の歳月が流れてしまった。
しかし、娘は生きていた。
犯罪者のフェリクスに保護されて、チームの一員として訓練を受け爆弾を扱えるように成長していた。
よかった、見つかった。さぁパパと帰ろう。
これが、そんな簡単にはいかない話だということに、あなたはまもなく気が付くだろう。
グレンが失った娘との10年は、そのままフェリクスと積み重ねた10年なのだ。
細密かつド派手なアクションと、クールでチャーミングな会話劇が光る、洋画ライクな読み心地の作品だ。
少女ミアは、どこで誰とどうやって生きていくのが幸せなのか。
痛いほど切ない運命を、共に見守ろう。
本作は「娘を失ったCIA職員」と「灰色ウサギの怪盗」が、同じ少女をめぐって交差していく"ハード寄りの家族×クライム・サスペンス"です。爆破事件で消えた娘の生存を信じる父と、少女を「ミア」と呼んで守り抜くウサギ頭――この二つの視点が、交差するストーリーです。
主人公格は二人います。
ひとりはCIAのグレン。ホテル爆破で亡くしたはずの娘・花澄(カスミ)が、灰色ウサギのマスクの男と一緒にいる映像を見つけ、真相を追い始めます。
もうひとりは、裏社会で「穴蔵破り」と呼ばれる怪盗フェリクス。少女ミアと暮らし、次の大仕事へ動き出します。
面白さの入口は、「この少女は本当にカスミなのか」「ウサギは誘拐犯なのか保護者なのか」「父は取り戻せるのか」という三つ巴の疑問が、ずっと背中を押してくる点です。
グレンは"喪失と執念"で、見つけた手がかりをひとつずつ詰めていき、フェリクスはミアとの距離が近い分、読者の感情を揺さぶってきます。
ミアは単なる「守られる子」ではなく、作戦にも関わり、しかも不思議な力(本人は"妖精さん"と呼ぶ導き)まで匂わせます。
ここが、ただの強盗劇で終わらない推進力になっています。
グレンとフェリクス。
二人の心情が、その背景と共に語られるため、非常に感情移入してしまいます。
灰色ウサギは"奪った側"なのか、それとも"救った側"なのか。
ミアが見ている"妖精さん"は、彼女をどこに導くのか。
果たして、グレンは花澄を取り戻せるのか。
是非、複雑に交差する感情の波を浴びてください。