頼り方も甘え方も知らない少女は、時を超えた想いに触れていく
- ★★★ Excellent!!!
枯れ葉や枝でできた衣をまとう蓑虫。そんな蓑虫を、清少納言は『枕草子』で「鬼が生んだ子」と見立てています。親に捨てられたことに気づかない蓑虫の子が鳴く様はいみじうあはれなり。そのエピソードを踏まえて、捨てられた鬼に手を差し伸べる一人の女の在りし日の記憶を持ってくるところも、心に沁みわたる粋なはからいと言えるでしょう。
葉と葉が重なるように、私の命がまたあなたに重なりますよう。また会えますよう。
鬼の子との再会を祈ってから時は流れ、大正の世。
鬼を退治した英雄・源頼光の血を受け継ぐ本家に、分家の娘である結葉が住むことになりました。一族のための結婚が決まっている結葉は、顔も素性も知らない相手との嫁入りの日を待つばかり。そんなときに出会ったのが、軍服の男性・紅炎でした。
からかっているのだと思ってしまうほど、結葉に向けられる紅炎からの言葉は甘くて熱く。親に恵まれているとは言えない生活を強いられてきた結葉にとって、大きな存在になっていくのです。
結葉のことを好いてくれる殿方は紅炎のほかに、顔見知りの好青年・志貴もいて、紅炎とは違ったアプローチの仕方にどきどきさせられました。
結葉のことを何かと気にかけてくれる本家の一人娘・綾女の動向も見逃せない、和風ファンタジーです!