音大に通って上京してきた愛佳。彼女はとある喫茶にやってきます。
呪いのバリスタと呼ばれる悠介は、人によって見る人が違うとかに見えてしまうとか。思い出のある人や思い入れのある人などに限定されます。しかし、愛佳は悠介の姿をありのままの彼の姿を捉えてました。
ほかの客には違った人に見えるのに、何故なのか。
珈琲の苦味とミルクの甘みが愛佳の視点で伝わってくる良作です。
読んでいると呪いのバリスタと呼ばれる所以が伝わってきますが、最後まで読むともっと身に染みるはず。
呪われているのは、本当はどちらのでしょう?
一読してみてはいかがでしょうか。
最初に【呪いのバリスタ】という言葉を見たとき、
正直、ホラーとかオカルト系の話かな、と思って読み始めました。
読んでいくうちに、これはそういう話じゃないな、とすぐ分かるんですが、
それでもこの文脈をあえて使っているのが、物語の掴みとしてすごく上手い。
不穏さがあるからこそ、喫茶店の日常や人の感情が、
逆に静かに浮かび上がってくる感じがしました。
個人的に一番刺さったのは、
「誰かの代わりとして見られてしまう」というテーマです。
悠介は、自分として見てもらえない。
それだけでもきついのに、
他人の記憶や感情まで背負わされてしまう。
ファンタジーの設定ではあるけれど、
読んでいて「現実でも割とあるよな……」と思わされました。
自分の意思とは関係なく役割を当てはめられたり、
期待や感情を投影されたりするあの感じ。
そういう理不尽さに、すごく共感してしまいました。
喫茶店やコーヒーの描写もとても良いです。
香りや味がちゃんと伝わってきて、
読んでいる途中で普通にコーヒーが飲みたくなりました。
それと、喫茶店の空気感。
静かで、少し時間がゆっくり流れているようなあの感じが、
登場人物たちの気持ちを受け止める場所になっているのが印象的でした。
文章もとても読みやすく、引っかかるところがほとんどない。
変に感情を押しつけてこないのに、
読み終えたあとには、ちゃんと何かが残ります。
コーヒーを飲み終えたあとみたいに、
少し苦くて、でも後味は悪くなくて、
しばらく余韻だけが続く。
そんな作品でした。
読後、
「自分は誰かの代わりになって生きていないだろうか」
そんなことを、ふと考えさせられました。
なんだか最近、うまく言葉にできない疲れが溜まっている人。
誰かの期待や役割に応え続けて、
少し自分が分からなくなっている人に、
静かに沁みる物語だと思います。
静かな喫茶店でコーヒーを一杯飲む時間が好きな人や、
人の感情がゆっくりほどけていく物語が好きな人には、
きっと残るものがあるはずです。
もし気になったなら、
一杯のコーヒーを用意して、
この喫茶店に、ふらっと立ち寄ってみてほしいです。
音大生・愛佳が訪れた喫茶店には、呪いのバリスタと呼ばれる――思い出の人そっくりに見える青年・悠介がいた。
愛佳や悠介、登場人物たちは人を想いやり、やさしく、みんな温かい人ばかりです。それでも、誰もが胸のうちにほろ苦い想いを抱えています。
人が生きていく上で抱えていかなければいけない苦み。けれど、一杯のコーヒーを通して、そっと心を温めて、同じ苦みを共有して、ゆっくり想いえお解きほぐしていく。静かで穏やかな心の交流が描かれていて、一つ一つの話が切なくもやさしくてどれも素敵でした。
また、物語のもう一つの主役であるコーヒー。
優秀バリスタである悠介が淹れるコーヒーは、どれも芳しい香りがこちらまで漂ってきそうなほどです。丁寧な描写で魅力たっぷりに描かれているため、読んでいるだけでコーヒー好きになってしまいそうでした。
誰もが持っている苦みをゆっくり丁寧にコーヒードリップして、最後には少しほっと胸を温かくするやさしいお話でした。愛佳と悠介がじわじわ距離を近づいていくときめく恋の行く末も素敵でした。
その人の顔は記憶の中の誰かが投影される。
それ故に「呪いのバリスタ」と噂される喫茶店に偶然入ったのは音大生である愛佳でした。その時は呪いのことを知らずに珈琲を楽しむのですが、後に「呪いのバリスタ」と噂されていることを知ります。
愛佳には「呪いのバリスタ」と言われる悠介の方が他の誰かには見えないのです。
それ故に呪いに半ば信じ難い思いを抱きながらも愛佳は喫茶店を再び訪れます。そして、喫茶店を訪れる人は、悠介が別の誰かに見えることを愛佳は目の当たりにするのです。
それは過去の記憶。忘れられない記憶。懐かしい記憶や甘い記憶でもあれば苦い記憶でもある誰かの顔が悠介に投影されるのです。
ですが投影される側としては自分自身を見て貰えないという苦悩があります。
それに気づいた愛佳は悠介に寄り添うようになり……そこから芽生える優しいドラマにほっこりとさせられます。優しいだけではないほろ苦さもありながら、それでも読み終えた後には不思議と温かくなるような、珈琲を飲んだ後のような余韻に包まれます。
愛佳は最初、内気で自信のない女性として書かれていますが、悠介の呪い、周囲とのやり取りを経ていくうちに自分なりの答えを見つけていきます。
珈琲のようにほろ苦い味わいを感じる物語、読み終えた後に残る優しさを是非、味わってください。
内気な音大生の愛佳がとあるカフェで出会ったのは、美しい所作で珈琲を淹れてくれる素敵な年上青年。しかし彼はその穏やかさに似合わぬ、『呪いのバリスタ』なんていう名前で噂になっており──。
私たちの街にもひとつはありそうな雰囲気あるカフェを中心に繰り広げられる、すこしふしぎなヒューマンドラマです。主人公の目線で進行する物語はとても読みやすく、立ちのぼる珈琲の芳醇な香りまで目の前に広がるよう。
どこか影のある悠介の前に次々と現れる、とある想いを抱えた客たち。時に忌み嫌われながら、そして時に思わぬ誰かを救いながら、彼はその不思議な力と生きています。素朴で素直な愛佳が彼に寄り添うシーンはとても優しく、この二人でいることの尊さを感じさせてくれます。
ずっとカフェから始まる物語かと思いきや、バリスタコンテストなど手に汗握るシーンもありメリハリが効いていて、作者さんの構成力に惚れ惚れするばかりです。時にハニーラテのように甘く、時にエスプレッソのように苦く。ー章ずつまるで違う味わいのドラマを見せてくれるのが素晴らしかったです。
主人公の愛佳もカメラ視点役としてだけでなく、しっかりと成長を遂げるのもまた泣けます。どう見ても普通なこの女の子が、どうして物語の主人公に選ばれたのか。最後まで読めば何もかもがわかると思います。最終話がまた人によっては……いいえ、なんでもありません。ここは最後まで辿り着いた人のみのお楽しみ♡(私は大好きなエンドです)
なんだかうまくいかないことばかりで元気がない、少し人生に行き詰まっている──そんな人の背中を優しく押してくれるようなお話。
気になったらぜひ、カフェ・オードリーへご来店を。
どなた様にも安心しておすすめできる一作です!
ふらっと入ったカフェのバリスタが、別れた恋人に、亡くした息子に、あるいは密かに思いを寄せていた相手にそっくりだったら、あなたはどうしますか?
本作は、主人公である女子大生・愛佳が、『呪いのバリスタ』と呼ばれる青年・悠介と出会うところから幕を開けます。
『呪い』のせいで、見知らぬ誰かの未練に触れることの多い悠介。
それはカフェのお客さんに限らず、バリスタコンクールの審査員や、自身の家族関係にまで影を落としてきました。
誰かの代わりにばかりされてきた悠介ですが、愛佳は『呪い』にかからず、彼を彼自身として見つめます。
一つ一つの『呪い』のエピソードは、愛佳の存在を通すことで客観視され、柔らかに、鮮やかに紐解かれていきます。
時に甘く、時に苦く、人生の複雑な味わいを映すコーヒーのように、心に沁みる読み口が絶品です。
最初は自分に自信のなかった愛佳は、悠介に寄り添うことでしなやかな強さを身に付けていきます。
本編最終話で感じた彼女の成長が、とても印象的でした。
優しく丁寧な筆致で綴られる物語がたいへん心地よかったです。
幅広くおすすめしたい、深みのある作品です!
別れた恋人や先だった旦那さんなど、見る人にとって思い入れのある人物の顔に見えてしまうという不思議なバリスタ、悠介さん。
そのせいで様々なトラブルがあったり頼みごとをされたり(。>_<。)
誰かの『代わり』にされてしまう寂しさや虚しさを抱えていたと思います。
そんな悠介さんを『悠介さん』として見ることができる愛佳さん。
二人の恋が心配で応援したくて、見守るような気持ちで読みました。
悠介さんがバリスタとしてコーヒーを淹れる場面がとても素敵で印象的なのもこの作品の魅力のひとつ!読んでいて、ふわりとコーヒーの香りを感じるほどでした。
素敵な作品をありがとうございました!
バリスタとして働く悠介は、その顔が見ている人の心にいる「誰か」に見えてしまうという呪いに悩んでいた。
ある日店を訪れた、悠介が悠介にしか見えないと言う愛佳と出会い惹かれていく。
呪いに悩む悠介に寄り添い、愛佳も様々な登場人物の心に触れ奮闘しつつも成長していき……。
会いたいけど、会えない。
言いたかったけど、言えなかった。
そんな心に何かしらの引っ掛かりを抱えたままの登場人物達の物語を解きほぐしつつ、感動と、苦しさと、切なさをゆっくりと混ぜながらストーリーが進んでいきます。
呪いと向き合いつつ、少しずつ関係を深め、前に進んでいく二人にはとても心が温まります。
最後まで「人との縁」で構成されたお話は、現実と同じで甘さや旨味だけでは無いけれど、苦味や酸味が織り混ざることで、物凄く奥行きと深みがある。
まるで本当に珈琲の香りが立ちこめるような、そんな素敵な物語です。
進学を機に上京した音大生の愛佳。新生活も落ち着いてきたころ、大学周辺で見つけたカフェ・オードリーに来店します。砂糖やミルクが入っていないにもかかわらず飲みやすいブレンドコーヒーに魅了され、お気に入りの店になりそうだと確信を得るのでした。しかし、その店で働く青年・悠介は【呪いのバリスタ】と呼ばれ、強い思い入れのある人の顔に見えてしまうお客様が後を絶たなかったのです。愛佳は悠介の顔を見ても特に影響を受けなかったものの、来店したお客様の依頼に巻き込まれていってしまい――
誰かの代わりとして見られ続ける苦しさを背負う悠介と、ピアニストの夢を持ちつつも現実の厳しさを痛いほど理解している愛佳。それぞれの持つ痛みの重さは違えど、支え合う二人の関係性に惹き込まれていきます。
カフェや喫茶店の雰囲気が好きな方におすすめのヒューマンドラマを、ぜひご賞味くださいませ。
突然目の前に思い出の人が現れたらほとんどの人は困惑するでしょう。それが一目でもいいからもう一度会いたいと思っていた相手なら咄嗟に声をかけてしまうかもしれません。
【呪いのバリスタ】と噂される青年・悠介は、見る人によっては彼のことが別人の顔に見えてしまうことがあるという、不思議な体質(?)の持ち主。それで相手が距離を保ってくれればまだ良いのかもしれません。でも別人だと理解した上で思い出の人との時間を彼に求めてしまう人もいます。そのせいで悠介は、自分はずっと誰かの代わりなのだろうかと思い悩んできました。
悠介自身、望んでそんな体質になったわけではありません。至って普通の青年です。それなのに彼を誰かに重ねる人達は、時にその人に対する自分の想いまでも悠介に押し付けようとする。
そして悠介が悠介にしか見えない音大生・愛佳はそんな人々に憤り、思い悩む悠介に寄り添おうと奮闘します。
【呪いのバリスタ】を見て過去の思い出を呼び起こされる人々と、彼らに翻弄される悠介、そして悠介を支えようとする愛佳。喫茶店を舞台に織りなす、時に優しく、時に悲しい人間模様が描かれた作品です。
主人公は喫茶店で出会ったバリスタの青年・悠介。彼は単なるバリスタではなく、ある“呪い”のような特異な特徴――見る人によって顔が違って見える という不思議な能力を持っています。この設定が、物語全体に自然な優しさとほんのり切なさを生み出しています。
単に不思議な設定にあるのではなく、その設定を通して描かれる登場人物たちの内面や過去の重み、そして“誰かと向き合うこと”の意味にあります。悠介という存在を通じて、人々は自分自身の過去や知られざる感情と向き合い、変わっていきます。その過程はまるで 一杯の珈琲のように、苦味と甘みが絶妙に混ざり合いながら心に残るものです。
文章は穏やかで柔らかく、喫茶店の空気や香り、時間の流れまで感じさせるような描写が魅力的です。読んでいると、まるで静かな午後にゆったりと珈琲を飲みながら物語を追っているような気分になります。物語全体からは、日常の中に潜む小さな“奇跡”や“気づき”への優しい眼差しが感じられ、読後にはじんわりと余韻が残ります。
見る人の記憶の中の人を映してしまう『呪いのバリスタ』と呼ばれる男性と、彼のありのままの姿を見る女性、二人の出会いと彼等が出会う人々のドラマ。
別人に見えてしまうことから起こる苦難に向き合って来たバリスタの悠介。彼の優しさに徐々に惹かれる愛佳。
オムニバスのように起こる出来事を経るごとに、二人の心が近付いて行く様子が丁寧に描かれています。
しっとりした人間ドラマが『他人に見えてしまう』というファンタジックな設定を妙に現実的に見せており、それゆえに巻き起こる出来事に疑問を持たせることなく引き込みます。
彼を見た人物は自分の過去と向き合い、そして何かを思い出してゆく。
否応なく巻き込まれる悠介を支えようとする愛佳、二人の想い合う様子も切なさを感じさせる物語です。
とびきり香り高い一杯の珈琲とともに楽しみたい、そう感じさせることを保証いたします!
ゆったりとした優しい文体で綴られる物語は
どこか安心感を与えてくれます。
香ばしい匂いを立てるコーヒーメーカー。
優しく包み込むような音楽。
まるで自分がそのカフェに来ているかのような感覚を味わえるのは、丁寧に世界観を構築されているからでしょう。
店内にいるであろう、お客様の声すら聞こえてくるようでした。
そんな落ち着く雰囲気の中に混ざるのは、とあるバリスタに関する謎。
『見る人によって顔が違って見える』
『しかも思い出の人にそっくり』
といった『呪い』に近い小さな違和感が物語のスパイスとなり、ページを捲る手に拍車をかける。
“誰かの代わりにしかなれない"と悩むバリスタの青年と"ピアニストになりたい"と願う少女の恋模様は、きっとコーヒーのように芳醇な香りがするはず。
淡く苦い想いが匂い立つ、どこか不思議な物語がどのような結末を迎えるのか。
続きを読むのがとても楽しみです。