鬼のために辛い決断を迫られる。心をゆさぶる恋愛小説です。

 この作品をひと言であらわすなら、甘さと切なさを高次元で両立させた和風恋愛ファンタジー作品と言えるでしょう。

 主人公の結葉は平安時代に鬼退治をした源頼光の子孫です。霊力をもつ彼女は、一族のために鬼の花嫁として差し出されることが決定されました。

 花嫁とは聞こえがいいですが、実際は……。ここからは、ネタバレになりますので、そこは本編を読まれて驚いてください。

 さて、結葉は周囲の男性から熱愛されています。

 作品の登場人物である綾女に言わせれば、特段の魅力もない女らしいのですが、彼女を情熱的に愛する男たちは、ひとりだけではありません。
 その中でもとくに、宮間紅炎は彼女への愛情を惜しみません。それには一千年の過去があるのです。

 さて、「蓑虫の恋」というタイトルも秀逸です。
 ここに込められた作者の作品への思いを考えるとき、平安時代の雅を思い浮かべてしまいます。

『枕草子』「虫は」の一節では、「蓑虫は鬼が生んだから鬼に似る」と書かれています。作品は清少納言のこの一節をモチーフにしているようにも思えます。

 繊細な描写で描かれた物語は、単なる「溺愛もの」ではない読み応えがあります。

 どうぞ、お読みくださいませ。

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