異世界作家創世録

「私」は日々の生活に飽き飽きとしていた。毎日繰り返される労働。代わり映えのない生活。そんなものはまっぴらである。
そんなことをするくらいなら空想の世界に浸っていた方が楽しいに決まっている。頭の中ではすべてが自由だ。大冒険は当たり前、国を興して世界を征服することすら容易い。どんな物語もすべてが思いのままだ。
そんなとき、ふと思った。
折角だから文字に起こして手元に残しておきたい。
思い立ったが吉日。書き上げた物語は比類なき面白さだった。
「私」が生み出した作品はある一人の商人の手によって伝播していく。そしてさる貴族に見初められ、王国の娯楽文化を花開かせることになる。
しかし、「私」はその程度で満足はしない。
「私」は終生の作家である。この命ある限り、空想の果てに筆を執り続けるであろう。この世の…続きを読む