「どうしてこうなってしまったのか知りたい!」思いを満たす前日譚!

「続きが知りたい!」という思いは、物語を読んだり観たりする原動力のひとつですが、「どうしてこうなってしまったのか知りたい!」という思いもまた、大きな原動力のひとつでしょう。

「ギリシャ物語」本編を読んで抱いた疑問が――ティリオンはどのように母タラッサの死や、それを父テオドリアスが隠しつづけていたことを知ったのか、どうしてあれほど忠臣フレイウスを恐れているのか、フレイウスが自分を殺すと思いこんでいるのか、といった――この外伝では過不足なく解き明かされています。
ティリオンと近臣たちの仲睦まじい光景は微笑ましく、失われることがわかっているがゆえに切なく、本編には出番のないキャラや出番の少ないキャラの活躍も楽しく、本編以上に自由奔放にふるまう双子も可愛いです。
ティリオンを誘拐しようとするサーカス団のキャラ造形や使いかたも、実に巧み。根っからの悪人ではなく、だからこそ悲劇が引き起こされるという、運命の皮肉。
そしてそして何と、ティリオンとフレイウスの特別な絆を感じさせるシーンも……! ここだけでもごはん十杯はいけてしまいますよね?
どうやらテオドリアスとオレステスも若い頃はそういう関係だったようなので、ぜひ二人の過去話も読みたい……あっ、すみません、脱線しました。

小説でも映画でも、前日譚というのは得てして本編に及ばないものですが、「ギリシャ物語」は例外だということを保証します!

その他のおすすめレビュー

ハルさんの他のおすすめレビュー766