真理の強さを秘めた、『言葉』が織り上げる多彩な輝き。

パワーのあるセリフというのはどのようなことを指すのでしょうか?

それは何といっても「セリフの内容に筋が通っているか」だと思います。
そのセリフだけ取り出してキャッチコピーのように見たとしても、例え誰が喋ったセリフか分からなくても、読んでみれば筋が通っている。

こちらのお話にはつまりそういう、パワーと魂の籠った、物事の道理をきちんと押さえたからこそ真実の強さが籠ったセリフがたくさん溢れています。

私は学園ものがあまり好きではないのですが、こちらの作品はある時から学園に入学し、学園ものの要素が入って来ます。
学園ものとして始まったわけではなく、主人公のレーキが孤独で、世界のことがまだ分からなくて、自分の中に確かな強さが無い時に、「行くべき道に迷う時こそ学べ」と学びの価値を示してくれたから、学院へ向かうことになります。

生きる為、自分の身を守る為、迷いの答えを得る為。

レーキは学生ですが、入学する前に苦労をしているので、学生になったからといって無為に日々を暮らしたり浮かれて羽目を外すようなことがありません。

常々学ぶこと、様々な知識を得ることが、人間としての強さになると思っている私にはこの展開はとても感動するものでした。

あまり好きではない学院に入って学ぶ描写でさえ、唸るようにして読めたのは、学院で主人公を待っていた人々の中にも、自分の中に芯を持ち、学んだり研究したり教えたりしている人物が存在していたからでした。


異世界ファンタジーはある意味で、何もかもが作り物の世界です。


しかし何もかもが作り物でしかないのならば、空虚な話にしか過ぎなくなります。
だからこそ異世界ファンタジーの登場人物のキャラには読者を納得させるようなパワーと魂が込められていることが求められるのです。

こちらの作品の個性は間違いなく「セリフの輝き、パワー」だと思います。

この話のセリフを幾つか読めば、一瞬にしてこちらの話は何か他の話とは違う輝きを秘めていることが伝わって来るでしょう。

主人公(少年)が一番苦しい時に、助かる道を教えてくれと乞われた「大人」が、解決方法というか、どうすればいいのか、という迷いに対して助言として与えてくれたものが「学びなさい」というものだったのが、本当に気に入りました。

これは恐らくこの異世界ファンタジーの作品内だけで通用する理というわけではないと思うのです。
つまり、作り物の空虚ではなく、読み手の現代人が自分のこととして聞いても何か胸に響いて来る特別な質量があるセリフなのですね。

優れた異世界ファンタジーには、実は、たくさんの真実の響きが隠れているものなのでしょう。

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