中学3年の夏休み前に、手持ちの教科書さえマトモに目を通した事も無い、佐々木健太君。低い低い勉強意識と学力レベルを、”当たり前”のように受け入れていた彼。
そんな彼にも、クラスメイトの気になる女の子には、見栄を張りたかったようで……。
無謀にも、難関高校受験を公言してしまう。
作中での、佐々木少年の、お馬鹿さんな言い回しが、じわじわ来て、楽しい!!
的確な”勉強アドバイスとメンタル補強”をしてくれる、謎の『定年前の図書館職員のおじさん』が、実は作者ご本人なのでは???
作中の、合格発表の方法が、昔ながらで、懐かしかった。
昔は、受験した高校の門の前では、こんな悲喜こもごもな光景が見られたんだよ~!
(いまどきの若者達よ!)
コロナ以降、受験現場の状況も変化し、合格発表は、各中学校にメール送信となったり、高校のホームページでの発表で終わる等、高校毎に、発表方法が変化してしまった事が残念でならない。
校門前まで、ドキドキしながら出かけたその足取りも、人生の大切な1歩だったと、今では思う。合格した友の笑顔も、不合格だった友の涙も、実際に”見た”現実であったのだから。
勉強嫌いの中学三年生・佐々木健太は、偏差値38の落ちこぼれ。そんな彼が、片思いの少女・白石莉奈と同じ高校に進学したい一心で、超進学校「王葉高校」を目指して受験勉強に挑む。初めて本気で勉強に向き合った少年が、本当の「学び」の意味を知り、成長していく青春ストーリーです。
主人公の健太が、市立図書館で出会った謎の司書・田村さん。彼の教えによって、いままで見ていた世界が一変していく発見や、学ぶ喜びに心が浮き立つんですよ。
「英語は音楽」、「数学は友達」、「社会は物語」、「国語はパズル」、そして「理科は『世界の秘密』」。一見、奇抜なようで、実は本質を突いた"勉強の極意"の数々。学校では教えてくれない本当の「学び」に、大人である自分もハッと気付かされます。私も、もっと早くに知りたかった。
田村さんの助言が、知識の迷宮を彷徨う健太の「冒険の地図」となって、過酷な道程に確かな一歩一歩を刻みます。それまで劣等感から好きな女の子の前でオドオドしていた健太が、努力を重ねたことで自信を得て、大人の落ち着きと思慮深さを身につけていく成長ぶりに胸が熱くなりました。
「勉強は、辛いだけじゃない。学びは、楽しい」。かつて勉強に悩んだ、すべての学生の心に響く一作です。
(「日本語を楽しもう」4選/文=愛咲優詩)