優しい言葉で話しかける。優しい言葉を返してくれるひとを見つけた。

波長が合う二人がいます。


考え方、話し方、好み、時間の使い方。


一度他の人と共に過ごしていたけれど、そういうものが合わなくて、別れてしまった二人。

でも蓉は「まえに 進むことはだいじ」と優しい響きの日本語で話す女性でした。

蓉の日本語は確かに簡単なものしかなく、端的ですが、彼女はその少ない日本語の語彙でも自分がどんな人生の歩み方が好きか、圭に伝えることが出来ました。

無から、よく分からない他人に話しかけたわけではなく、
圭から話しかけた時に、「この人はこの日本語でも怒ったり困ったりしない人」だということを感じ取ったのかもしれません。

塞いだ気持ちから始まった圭の旅が、蓉に出会った事で大きく変化しましたが、

彼らはどちらも無意識でも、もしかしたら今までにない、優しい言葉で話しかけてくれるひとを探していたのかもしれません。

波長が合う二人にとって、惹かれ合うことは容易いと私は思っていますが、

この話にはちゃんと奇跡も起こっていて、

あの時ジェイクさんに直接連絡を取って店の位置を聞いていたら、蓉さんの店で道を尋ねることもなかったわけです。
それが圭さんの「サプライズで行ってジェイクを祝ってあげよう」という、これも友人への優しい気持ちから起きた遊び心が蓉さんに出会わせてくれたのですね

人生とは意識してないと見逃してしまうほど、小さな奇跡は案外起こっているのかもしれません。


優しい人に出会いたいのなら、
自分も優しい言葉で、誰かに話しかける。


その響きを望む人が、ふとそういう自分に気づいて振り返ってくれることがあります。

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