画家だった祖父は、毎日を離れにこもって絵を描いていた。それらはいずれも人手にわたり、残されたのは、その黒い絵が一点だけ。不気味だと言われながら、ある人からは褒められる。そんな謎を湛えた絵。その黒さの謎は、最悪の形で知らされることになった――。どこまでも黒いなかへと引きずり込まれる、狂気を描き上げた名画です。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(243文字)
目的のためには、手段は選ばない。突き詰めると、そこに至るのではないだろうか。例えば、目的を果たすために、潤沢な資金を使う。倫理に外れることをする。重要なのは、目的。妥協せず、突き詰めることこそが、芸術。このお作品を読ませていただき、そう感じた。
祖父は画家のだった。 部屋にこもり絵ばかりを描いていた。 祖父の絵には独特の色がある。 独自に作った彼だけにしか出せない色。 そこにはどんな秘密があるのか。 深い怖さのホラー短編です。
この作品で怖いのは、「あの絵の材料は何だったのか」という疑問に、最後まで答えが与えられないことです。祖父が手作りしていた顔料、決して入れてくれなかった奥の部屋、そして血で絵を描いていた住職の「何人重ねても越えられない」という言葉。点在していた違和感が最後に一本につながった瞬間、玄関に飾られた一枚の絵がまったく違って見えてきます。そして最後の一文が、読者を「まだそこにある離れ」へ置き去りにする。説明しすぎないからこそ、絵の奥行きが現実の外側まで続いているような余韻が残ります。
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