鳥に啄まれたおめめの標高は高く。
左手に見えまするは一見するとただの湖。
そこには瞬きの合間にだけ姿を現す不思議な物の怪がおりますれば、水面に近づく生き物を喰らうといいます。
亭主が芸姑に夢中になれば、暖簾が濡れると云いまして。それに倣って雨をしのごうと、赤茶色の外套をくるりと翻せば、小気味の良い足音と共に、夕立が何もかもを流してしまいます。流れる蜜はほどほどに甘く、けれど鼻を引き千切りたくなるほどの悪臭を携えているのだとか。怖い怖いも好きのうちとは申しましても、悪戯に身を削るわけにはいきません。蓋を閉めれど底には穴があいておりまして。遠吠えと高を括っている時ほど、すれ違うものでございます。
さぁさぁ。
寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
威勢の良い声に振り返れば、
仇と不幸が押し寄せる。
汚い、汚い、あぁ汚い。
愛染、罵倒の古今となれば、
呼吸もおちおちしてらんねぇ。
老いも縋るは人情なれど、
この世は幾千夢現。
今宵の宴は無明かな。
泣きつ叶わぬ未練かな。
そんなことを呟いておりますと、月の涙に誘われまして。行灯を掲げてひょいっと水溜りをひとっ飛び。下駄の露なす淫らときたら、ノウゼンカズラも踊りだす。
ちょいとお待ちよ旦那さん。
身捨てを見捨てて非道いじゃないか。
あっけらかんと小袖にすれば、
あれよあれよと奈落の地獄。
飛んで火に入る夏の虫。
丸い金柑、一昨日、時雨。
擦った揉んだの痴話喧嘩。
それを嗤うはやっぱり、おめめ。
気味悪いったらありゃしない。
困った住職、神頼み。
拾う神なし、紙切れ同然。
小粋な番頭、艶見て後悔。
後悔するなら旗持て尺なし。
恋慕の坊っちゃん文投げて。
手練手管の御呪い。
恋しい人は何処やら。
あれよあれよと極楽浄土。
あの世の情けはおととい来やがれ。
後生後生と嘆いてみても、
あれよあれよと店仕舞い。
何の話かって?
嫌だねぇ、旦那。
口上なんてのは二束三文の反物と同じ。
着崩れしたって粋には成れず。
それに、ようよう思い出しておくんなまし。
飛んでいるのはあんたの目玉さ。
お後がよろしいようで。