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第124話 壱妻の変更と空席(捕:次回更新予定)

 帝国貴族が正式な婚姻を結ぶのは原則として一階層上から一階層下まで。特別な能力や功績がある場合は二階層差まで。「特別」とは、魔法の才の場合は「普人は第五魔匠士以上か、森人は恩寵魔術士か」。リナリア様はショウくんを男爵籍相当(降爵した「元」含む)と期待しています。

 森人貴族は複数の森人妻を娶ることが一般的です。但し妻が双方ともに貴族籍の場合は、壱妻の変更は優秀な魔法能力者を生む等の強い理由が必要です。位階が高い方が自動的に壱妻とはなりません。従って貴族に見えるカレンが「壱妻です」と告げる方が面倒な事態を招きます。

 カレンがこの世界の森人ならば、カレンの方から旧王家のお姫様に壱妻の座を譲る忖度をします。でも森人社会では「壱妻の座を奪った」という花粉が飛ぶことは避けねばなりません。アステリデ家はカレンの実家に対して、単に引き立てるに留まらない、難しい対応を迫られるのです。

 ここでショウくんが「妻は平等」と告げて「壱妻は空席」と誤解されたことが効いてきます。カレンが壱妻でないなら、ショウくんは貴族籍でカレンは貴族籍ではない可能性も。この場合は後から嫁いだ貴族籍女性が壱妻となることに障害はなくなります(カレンは納得するとこの世界では見做される)。

 空席宣言は「上昇志向が強くて上方婚を狙っている」と悪く思われかねないので普通はしません。でも彼がそのような人間でないことは明らか。そして未婚の貴族令嬢の前での空席宣言は誘いとも取られます。リナリア様の「花開き」を二重に後押しする意味を持つことになったのです。

 ちなみに普人平民社会では、このような機微は誤解されています。「登仙楼」で「壱妻ではない」発言に「さすが!」と反応されたのは「もっと妻が欲しい?」「更に妻が増えても満足させられるということ?」という下世話な「森人は爆発して吹き飛べ!」案件と取られたからなのでした。

※次回の更新は10/24(土)を予定しています。

8件のコメント

  • なるほど!空席宣言は誘いとして受け取られてしまったのですね。
    なんてこったー!やばいですよ。ショウさん。言質とられた感満載です。
  • 苗田はな様
     なんてこったーでございます。でもお姫様だからこそ、双方の実家と遣り取りする時間が必要だと思ってくれます。巫后様の返事が届くまで、従者たちはただ待つのではなく、お尻を叩き続けるでしょうが……自然とリナリア様と仲良くなりそうです……。
  • 空席宣言にそこまでの理由があったのですね!色々まずいですが…一方で普人平民社会の受け止め方に笑ってしまいました。
    異文化だから仕方ありませんが、ショウくん、どちらにしても誤解しか生んでいないという(汗)
  • 雨包おん様
     ショウくん、娼館には衣服の仕立てに訪れただけですし、神殿も呼ばれたから光治療に訪れただけなのですが。何時の間にか誤解されて、無自覚に罪を作り続けております。リカとモモとカレンの悩みは、延々と続きそうです……。
  • 壱妻という立場もかなり厳格に決められているのですね。
    うーん、リナリア様がショウ君にお輿入れしたとしても、ショウ君は壱妻は定めないと思いますし、対外的にどうなるのでしょうね。
    リナリア様ご自身は壱妻に拘らない気もしますし。
    ん?
    そもそもリナリア様、徨う花として活動させてもらえるのかしら?という疑問も。
    色々とややこしい状況になってきましたね。
  • 桐原コウさま
     貴族社会ですし、貴族籍に定員がありますので特に嫡妻たる壱妻の地位は重要なのです。対外的にはリナリア様が壱妻、カレンが弐妻は動かせません。
     そもそもショウくんは少なくとも男爵にならないと、リナリア様と婚姻できません。道は遠いのでございます。
     そして森人貴族女性は、まさにリナリア様がそうであるように魔術士としての仕事があります。夫婦の任地は別であることも多いです。セルウァである方が、ショウくんの傍にいることができるのでした。それこそがセルウァが妻となりやすい理由ですので。
  • 「妻は平等」のつもりが、貴族社会ではお誘いになり、登仙楼では「さすが!」になるとは……言葉は通じているのに!慣習がわからないとは、恐ろしいことですね((((;゚Д゚)))))))

    カレンを壱妻と紹介すれば済む話でもないのですね。慣習を知るほど、四人の立場の難しさが見えてきます。
  • 裕邑月紫さま
     はい、文化トラップが炸裂しております。将来的には転生者の告白に至るかもしれませんが、心理的抵抗の大きい慣習に対しては悩み続け、そして受け入れていく。これが現実的に最も有り得そうな転生譚ではないかと考えております。
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