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長江のほとり

常々私は何でこんな素敵な呉が日本だと人気ねえんだ どう考えても魏と蜀よりあったかい気候で半裸の男たちが多そうで素敵だろって疑問に思っていて、日本で三国志の小説と漫画って言ったらこれ!! みたいな作品がどうやらこぞって「演義系」で、あまり呉の素敵な描写が少なく書かれているらしく、そのせいで日本の三国志界にこの呉をないがしろにする風潮が蔓延したのか!! って思ってなんだ陰謀か!!! 怒りに打ち震えていましたが、

昨日孫権にキレててふと気づいたのですが……。

呉が人気ねえの……おめーのせいなんじゃねえか孫権

前も言ったけど、あいつをヒーロー!! 主人公!! 孫家の三代目が継ぐ熱き三国志!!!を書こう!!! などと思って書いても絶対段々行動がおかしくなるから絶対書いてると展開に詰むんですわ。

どんなにカッコよく孫権主人公で書こうとしても絶対打つ手が無くなって詰むんですわ。

よし!! 俺は孫家のカッコいい生き様を書くんだ!!! と喜び勇んで書こうとする人はいると思うんですよ。それは堅パパと策兄の生き様があまりにカッコいいから。

だから彼らを「遺志」という形でも書きたくて、孫権を消去法で書こうとする人はいるでしょう。頑張って若き当主になる!! 赤壁を勝つ! 関羽を討ち取る!! 夷陵を勝つ!! 盤石な江東の情勢!! そしてそこに現われる二宮の変の孫権。
その時の絶望!!

言うたじゃないですか。「呉(の土台)を作ったのは孫策。滅ぼしたのは孫権」

私はこの見方が真理なんだと思うのです。

これなんですよ。

だから孫権を主人公に書こうとする人みんな失敗するのです。

なんでそんな有名な小説家とか漫画家が呉とか孫権を書かないわけ? と書いてないこと多いらしいので疑問に思っていたのですが、逆にプロなんかはアマチュアより勘がいいわけでしょ? 

彼らの優れた直感が「呉を作ったのは孫策、滅ぼしたのは孫権」っていう真理を鋭く見抜いて敬遠してるのでは……😇

そらそうだよな

建国の父なんて普通題材になるけど、
建国して滅亡もさせるとかなると じゃあ俺達が必死で書いて来た半生なんだったんんだよって思うもんな。書いてると。

呉を書いたことある人なら分かると思うけど確かに呉って盛り下がるんですよ。

いや違います!! 二宮の変まではすごい盛り上がるんですよ!!
でももう陸遜の死後は盛り下がって行くんですわ国が。

秀吉とかも晩年耄碌してますが、やはり家康が凄いんですわな。あれ。
そこから何代も江戸幕府として栄えて行くのはやはり見事です。
ああいうのは作家としてやっぱり書き甲斐があるのです。
秀吉という人間の生涯も、一人の人間としたら書くこといっぱいあって面白いと思いますが、国の統治者としては短命なので、国を書きたい場合そんなお呼びではない題材なのです。


孫権に比べて司馬懿とかはやはり時代を突き抜けた生き方をしてますので確かに題材になり得る人だよなって思いますもんね

歴史小説は 
①人を書く時と
②国を書く時と
③時代を書く時があります

人を書く時はただひたすら惹かれた人を主人公として書く。
まあ私も陸遜を主人公に据えたので、①に該当すると思います。

②は①と併用して描かれる感じも多いですね。つまりその主人公が関わった国を書いたりもするので、そういう併用した描かれ方もあるし、
本当に「俺はヴェネツィア共和国の1000年を描く!!✨」と何代も何代も人は変わりながらも、ある特定の国に焦点を当てて書く。

③は三国志の三国視点のように、ある特定の時代の国々や人々を書きます。
戦国時代を描く、などもそうですね。明治維新を描きたい、とかも、人や国を書くというよりもっと流動的な「時代」を捉えて描く。



孫権を書くなら①しかないんですわ。
しかも順番で当主になっただけなので、神格化するにも無理がある器なので、それが二宮の変で露呈します。だから私は孫権を好きで、孫権を書きたがる人は、必ず二宮の変を書くのを嫌がるか、逃げて回避するはずだと思います。
孫権大好きで二宮の変まで逃げずに書いてる奴一人も見たことが無い!!!!!

私は孫権大嫌いなので全然二宮の変のコイツまで鮮明に書いてやれるんですが、陸遜が大好きすぎて、可哀想すぎて二宮の変を長い間書けませんでした。
立場は真逆ですが、理由は同じなのです。二宮の変の加害者は孫権、被害者が陸遜ですからな。

同じ事件を疎む気持ちは一緒なのです。まあこっちはだったらそんな嫌な事件私欲で起こすんじゃねえよって言いたいですが。

私は見事に二宮の変という千日手に見られた難局を「この手が唯一の起死回生の一手!!!」「これしかない!!!」って一手を閃いて突破しましたが、

孫権をいいように書く人は絶対二宮の変は突破出来ません。

つまり、無かったことにするしか彼らは出来ないのです。

それは「孫権」という人間を、いいようにしか書いていないから。
こいつの奥底にある、醜さ、汚さ、「さほど才気のある人間ではない。単なる我が身の可愛い人間だった」という事実から目を背け、そこまで深く孫権を見てないからなのです。


みなさん。

苦手なものや、
嫌いなものはあるでしょうか?

あったとして、それとどう相対していますか?

極力考えないようにする?
しかしその苦手が例えば将棋の棋士とかでいう、何かと対局しなければならない相手だったとしたら、「付き合わないようにしよう」などと言ってられません。
アスリートもそうです。
苦手な相手であれば、相手を調べ、観察し、対処法を練らねばならないのです。

そういう風にして苦手や嫌いなものを克服して立ち向かっていく人たちがいます。

私も実は苦手なものがあると、その生態を知り、あいつらが何に弱いとかいつ行動するとかどこを好むとかを知り、対処方法を身に着けて安心するタイプです。

しょーもない嫌いな人間とかは相手してもしょーもないので生態調べることもなく無視するだけですが、しょーもなくない苦手なものや嫌いなものは対処方法を調べて対処する方なのです。


だからすっごい嫌いな虫とかいると、友達に「いいか、あいつはな……」とどんな生態をした奴かを話して「だからこうするといいんだ!✨」みたいに話すと

「嫌いなのに無茶苦茶生態に詳しいんだね……」

と引かれるんですけど、

ばかもの!!!!!!!

嫌いなものの行動把握しておかないと、奴らが行動を起こした時にこっちがパニックになって対処出来なくて怖いだろ!!!!

熊の習性とか知らないのに熊に対処出来るか!!!

ばかもの!! そんなことでは嫌いなものや苦手なものに逆にやられるぞ!!!

といつも喝を入れていますが、

そうなのです 私は苦手なものや嫌いなものの生態に無茶苦茶詳しいのです。
嫌いな食べ物とかあると、苦みがどうやると一番出ないかとかそういうのを調べて対処しますし、嫌いな奴がお昼休憩よくあそこにいるよとか聞くと絶対そんなところ近づきません!!

防衛本能がものすご高いので、嫌いな敵のことほどよく調べるタイプなのです。
軍師タイプですね!!!(いいように言った)

なので、孫権のことも大嫌いですが、無茶苦茶詳しいのです。
孫権をいいものとして書いてる人は、こんなに孫権が大嫌いな私よりも孫権のことを詳しく調べてもおらず、深く考察も出来てないのです。

呉は、様々な魅力的な孫権以外の登場人物が出て来ます。

私は孫権以外の人を主人公にして呉を書いてる人がいたら、多分興味持って読んでみようーって思いますね。

それは多分、まあそのキャラが好きなのは間違いないけど恐らく孫権を素晴らしい君主として呉という国を書くと「必ず展開に詰む」ことを知ってる賢い作家なんだなと思うからです。

孫権を主人公に書くことは、若干歴史の設定上仕方ない部分があります。
史実なので。
ですから私も仕方なく呉の君主として奴を書いています。

ああっ!!! でも仕方なく書いてることは作品内おくびにも出してませんよ!!!

そんな孫権嫌いなことを作品で書いててバレるなんて作家として情けなさすぎる力量なので、作品内では頑張って君主している孫権様しか書いてませんよ!!

むしろ近況ノートであんなに悪態ついてるのによくもこんなまともな孫権様普通に書けるなとそこにどうぞ驚いて下さい!😊

孫権をいい人のように二宮の変まで書いてやるなど、
父親が死んですぐにその埋葬も済ませてない胸倉を掴まれて孫権に父親の濡れ衣を詰問されても怒ったり泣き喚かなかった陸抗君の聖母のような大きな器を思えば、ちょろいもんですわ

まあとにかく孫権は主人公にしても歴史的に全然不自然じゃないのが逆に扱い厄介なのです。

しかし陸遜研究家の私から見れば、孫権の本質を分かっていて孫権主人公で仕方なく書いていて、本当に書きたいものは別にあるのか、
それとも孫権の本質など全く分かっておらず、ただただ「父と兄の夢を受け継ぐ次男!!!」などという浅い理解でしか書いてないのかは、数ページ見ただけで一発で見抜けます。

描き方が全く違うものになりますからね。

言っておきますよ。
孫権を「素晴らしい特別な人間」などという書き方をしてる奴は絶対に二宮の変で筆を折ることになるでしょう。


孫権は「醜さも持つ普通の人間である。ただ順番が来たから当主になって頑張った」というのを弁えた人は、必ず上記の人間とは孫権の描き方が違うと思います。


しかしながら、今の所そういう気の利いた孫権が書かれているのを私は一度も見たことがありません。


……やっぱりどう考えても呉が人気ねえのお前のせいだろ孫権!!!💢💢


盛り下がるねん盛り下がるねん!!!!
お前のせいで呉が国として盛り下がるねん!!!!!

文章書かない奴 晩年までは盛り上がるならいいじゃないのとか思ったやろ!!

違うねん!!!

ふとした時に「こんなに一生懸命赤壁や夷陵、命を懸ける周瑜や魯粛や呂蒙を書いても、いずれこの国は孫権の身勝手で滅ぼされるのか……では今俺は一体何のために戦っているんだ……」と思った時の絶望!!!!! すげーんだ!!!!!!!

全ての気力を奪うねん!!!

お前の人生だってそうだろ!!!

今ものすごく勉強頑張って、いい大学に入り、素敵な恋人を持ち、いい仕事につき、素敵な夜景が見える高層マンションにいつか住むぞ!! って頑張れるのはいつかその夢が叶うと思ってるから頑張れるんだろ!!

それが神様に「貴方は確かにいい仕事につき夜景が見える高層マンションに住めますが、必ず入居二年後に地球のどこにいても貴方の上に隕石が落ちて来て人生を終えます」って言われたら勉強そのまま頑張れるか!!?💢💢

何のためにそんな勉強頑張らなきゃならないんじゃい!!! って気持ちになるでしょ!! あれです!!! 呉を書く時に感じる絶望は!!!

んじゃなんでお前はそんな絶望の国を小説で時間掛けて書いてんだって


そこなんですよ!!!!!!!!


そんな絶望の国に最初から最後まで人生を捧げられる人間がいるから、
それが凄すぎる!! と思うから書くのです。

呉は絶望の国ですが、

絶望の国の中に、
絶望を知らない魂で、
とんでもない輝きを放つ人間が何人かいるから!!


だから呉という国が大好きなのです!!!✨

私が呉を書くのは孫呉の為ではなく、孫権の為などではなく、
生まれ育ったあの長江のほとりの国土を愛し、
ここに強く豊かな国を作るんだ!! って志を持って命を燃やした人たちが無茶苦茶魅力的に思えるからなのです。

孫権は違いますよ。あいつは呉という国を自分の玩具かなんかみたいに勘違いした結果国を滅びに向かわせてるんで。あいつはそういう呉を豊かな国にするんだ!! って志を持って命を燃やした人間が死んだ時に葬儀ででっかい声を上げて泣いただけの奴です

私ほど孫権が大嫌いなのに【呉】の話を書いてる人間もすごい珍しいと思いますね。

ほとんどの人は孫権が若くして重い運命を背負わされた、悲劇の青年、頑張って生きていると思って奴を書きますから。

しかし三国時代など、【若くして重い運命を背負って、家族を失い、それでも頑張って生きている人間】は、さして珍しいことでもないのです。

それこそ――

孫権を「たかがそんなことで」祭り上げること自体、題材として指定する作家の考えが浅すぎるのです。


ですから私は孫呉が好きなのではなく  【呉】が好きなのです。

孫権が好きなのではなく 呉という国に生きた、守ろうとした、豊かにしようと尽力した彼らが堪らなく魅力的で好きなのです。

孫権が見下げた君主である以上、曹操という強大な王を持った魏、劉備という圧倒的な意義を持ってしまった蜀。

やはりこの二国と、呉は違う気がします。

呉の武将はやはり孫家三代に忠義を誓っているのです。
孫権ではなく、孫堅、孫策への想いを含めて、誓っている。
だから孫権が孫堅や孫策の功績をないがしろにすることは「許されること」ではないのです。

呉の武将達は呉の建国に尽力した孫家に対して忠義を示し、
彼らはひたすらあの江東、江南の風土や気候を愛し、そこにある母国を想っていたように感じます。

甘寧なんかもそうですよね。元々蜀の方にいたけど、段々と長江流域に住むようになってきて、臨江あたりの風土がとても気に入ったんだと思います。
だからそこでずっと生きるならば、賊よりも武将になった方が公に認められて過ごせるし、だったら出仕するか手勢にも食わせなきゃならんしなという発想なんだと思います。

特別な大地なんですよ。彼らにとっては。

蜀にも魏にも涼州にも、別に行きたくないんです。

あの江東の温暖な気候と長江流域の水のほとり。

彼らはあの大地に忠誠と愛情を誓った人々なのです。

私はそこが無性に好きなんですよね。

曹操が絶大な権力を握った魏、
劉備が圧倒的な人望を持った蜀。

それとは呉の人々は違う気がします。

もっと、「一定の善政を行ってくれる君主がいるなら例え誰が王でもそこにいた」って感じがする。

もっと自由で、若干共和国感があるとこが何とも私には魅力的なのです

孫家の孫呉は滅びの国ですが、

江東、長江のほとりはいつも温かく湖面が輝く大地である気がします。

しかしながら優れた作家が三国時代書くかと思った時に、やはり孫権主人公では国を興しても自ら滅ぼしてるあたり、ある意味「普通の人間」すぎて題材として退屈だと思うのかもしれません。

その気持ちは私もすっごい分かる。

まあ孫権の場合普通の人間以下ですけどね。器量は。

しかし歴史においては凡人が王になってしまうこともあるのですよ。

それは現実の歴史であり、創作の設定ではないから仕方のないことなのです。

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