絵は水鏡冬華。群像じみた人物の多さになると、メインヒロインと言えとも出番が少なくなる。かなしかなし。
プレビュー↓
「あ、そうそう」
ミハエルが突然手を叩いた。ヨルムンガンドからのお尻ステーキ関連の質問で盛り上がっている最中、まるで何かを思い出したかのように。
「ヨルムンガンド、君がなぜ2300年後の地球を滅ぼしたのか聞いてたよね」
「『2300年後』?」
エウメネスが困惑した表情を浮かべた。
「何の話ですか?」
「ああ、去年の話だ」
ミハエルがあっけらかんと答えた。
「わたしたちが地球を滅ぼした話」
「地球を滅ぼした?」
一同が驚愕の表情を浮かべた。ヌアザの翼すら震えている。
「待て」
ヌアザが慌てた声を上げた。
「地球を滅ぼしたとは何事だ?」
「あー、説明が面倒だな。時間があっち行ったりこっち行ったりしてる」
ミハエルがため息をついた。
「まあ、せっかくだし話しそうか」
『ぜひ聞かせてくれ』
ヨルムンガンドが興味深そうに身を乗り出した。
『我もその話には興味がある』
「じゃあ」
サリサがホワイトライガーの耳をピクピク動かしながら口を開いた。
「わたしが説明してあげる」
「サリサちゃんが?」
天馬蒼依が驚いた。
「いつものミハエル解説じゃないのね」
「今回はわたしもフィオラも当事者だからね」
サリサが自信満々に答えた。
「フィオラも一緒だったもんね」
「ええ。そうね」
フィオラが上品に頷いた。
「確かにあの時は三人で行動していた」
「三人で地球に?」
オリュンピアスが恐る恐る聞いた。
「はい」
ミハエルが軽く答えた。
「用事があって家族と別行動した時の話だからね」
ミハエルが遠い目をして語り始めた。
「去年のことだが…」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『用事がある』とミハエルは家族に告げて、一人で宇宙空間に出た。実際には用事というより、地球の状況がもはや看過できないレベルに達していたからだ。
「やあ、ミハエル」
現れたのはサリサとフィオラだった。
「二人とも来てくれたのか」
「当然よ」
サリサがホワイトライガーの尻尾を振りながら答えた。
「聖書で神ぶってるブルーブラッド・レプティリアン、アヌンナキを叩いておかないとねー」
「地獄の球、地球の」
フィオラが黒竜の尻尾をゆらゆら揺らした。
「World War 3をやったというのに、まだ苦しみを食べたいのかしらトカゲめ」
三人は宇宙空間から青く見える地球を見下ろしていた。だが、ミハエルたちにはその本当の姿が見えている。凹型の、醜い形をした星が。
「あいつらのせいで」
ミハエルが左手にエネルギーを集めながら続けた。
「地球人は死んでも魂を解放されずに、また地球に投げ捨てられる」
「地獄の輪廻よね」
サリサが同意した。
「来世で新しい苦しみを背負って泣いて、選挙で政治が変わらないー、いつまで重税に耐えたらいいのって嘆いて」
「皆が行くから〜で大学行って、食べるためだけに就職する自分は一体何なんだ、地球って一体何なんだ」
フィオラが続けた。
「戦争は起こるし税は重税だし、その嘆きはレプティリアンのエネルギーになる」
「その地獄ループを止めないと」
ミハエルがエネルギー波を圧縮した。
「あいつらの、レプティリアンの望まない滅びでレプティリアン狙い撃ちしないと」
「魂の牢獄をぶち壊さないと地球の人がかわいそうだ」
サリサが力強く言った。
「They live but, I shall kill them reptilian」
「イエスなんてものが本当にいたら」
ミハエルがエネルギー波を構えながら続けた。
「イエスがこれをしてるんだけどな。探したことあるけど、イエスの魂を探したら決まってリザードマン顔の化け物が出てくる」
「あれがイエスかしら?」
フィオラが首をかしげた。
「もし、あれがそうならイエス=ブルーブラッド=レプティリアン=ヴァンパイアよ」
「ブッダが」
サリサが皮肉たっぷりに言った。
「『宇宙人によって月が用意され、奴らに輪廻転生を支配されている。だから解脱しないとわたしたちはいつまでもあいつらのエサなんだ』と語ってくれたらクリティカルヒットなんだけどなー」
「すべての宗教は魔法結社のレプティリアンの道具かー」
ミハエルが左手でとてつもなく圧縮したエネルギー波を放った。
「考えてみれば、地球の人間の人生なんて、理不尽な苦しみだけだもんねえ」
サリサが同調した。
「気持ちとしては分かるよ」
「『滅びこそ、我が喜び。嘆き悲しみつつ死にゆくものこそ とても美味しい』」
フィオラが悪魔の言葉を真似て言った。
「『希望が絶望に変わる瞬間のエネルギーが好き』だもの」
「他の生き物の苦しみがないと生きられない、出来損ないが多すぎ」
サリサが怒りを込めて言った。
「異世界転生したくなるの無理ないよ」
「でもブルーブラッド・レプティリアンと戦わずに逃げてるから」
ミハエルがエネルギー波を放ちながら続けた。
「向こうが用意した茶番=選挙に投票して一人前ぶってるようじゃ、やっぱり助ける対象には入らなーい」
「ブルーブラッド・レプティリアンと直接対決して殺さなきゃ」
サリサも左手にエネルギー波を思いっきり力込めて放った。
ドキュウウゥゥゥゥウウウゥゥゥウウン!
「異星人による強制輪廻転生説は正しい」
ミハエルが話を続けた。エネルギー波を地球に向けて放ちながら。
「だから仏教では解脱と言ってるんだよ。でも仏教の『成長のために生まれ変わる』のような話は、意味をなさなくなるけど。矛盾だな」
「ブルーブラッド・レプティリアンは」
フィオラがミハエルの真似をしてエネルギー波を地球に撃ちながら喋った。
「死後の魂を監視し、嘆き悲しみの感情をくらい腹満腹になり、満足する」
「そのために政治家が酷すぎることをして」
ミハエルが続けた。
「『民衆をわざと怒らせて、主人(レプティリアン)の餌を育成する』という発想」
ドキュウウゥゥゥゅウウウゥゥゥウウン!
「宇宙人によって地球人、そして宇宙からやってきた宇宙人の魂も強制的に輪廻転生されてるんだっけ」
フィオラが言った。
「そ。わたしたちが地球でヘマしたら地球に魂ごと閉じ込められるの」
ミハエルが気楽に答えた。
「ごめんこうむりたいわね」
フィオラが嫌悪感を込めて言った。
「まぁわたしたちは霊波動学んでるから」
ミハエルが続けた。
「レプティリアン全員殺して出られるけどね。奴らはエジプトでもどこにいた時も魔法結社だもの」
「まぁね」
サリサが同意した。
「パワー自体は大したことないし。魔法で搦め手するのがうっとうしいだけで」
「世界人口5億まで削減するなら70億の魂が余ってしまうけど、どうするんだろうね」
フィオラが疑問を投げかけた。
「70億魂食べんの? 大魔王じゃん」
ドキュウウゥゥゥゥウウウゥゥゥウウン!
サリサがそう言いつつ、星を砕きかねないエネルギー波を地球に送った。サリサの一撃で、北極を含む北半球全てが消し飛び、海に変わった。
その日、地球の大地は25%を残して消し飛んだ。ミハエルとサリサとフィオラのエネルギー波が地球を襲ったのだ。地下までえぐるエネルギー波が。
日本は日本よりも大きなエネルギー波に包まれ一瞬で消え去った。
「バーカが」
ミハエルが黒竜光波を撃ちつつ言葉もぶつけた。
「高学歴を笠に着て、レプティリアンの手先となって、日本人弱体化させようと必死な売国野郎」
「そんなことしてっから完全に外からエネルギー波食らうんだよ」
「お前らが霞が関にいた時代の経済成長率、地球上で史上最低、内戦中の国より低いんだろうが」
日本を牛耳っていた黒幕たちに向かって容赦ない言葉を投げかける。
「1995〜2015とかマジで内戦中の国より低い」
「それに悪魔崇拝に加担しないと売れないって、悪魔崇拝してた日本人」
「お前らも同罪だ。コルナサインしてた日本人」
「悪魔崇拝加担しないと売れない社会になってたとはいえ」
「黒竜光波で地下までえぐってやるからな」
「逃さずあの世に送ってやるぞトカゲめ」
ほぼ無傷だったのはアフリカである。かつてカダフィがいたリビアは無事だった。
「おい! なんだあれ! 俺の魔術の予定表には—————!?」
地下から悲鳴が上がった。
「誰だこんな無茶苦茶する奴は—————! せっかく民衆が怒り狂う政策ばかり取って、消費税上げて民衆を殺して、魂の奴隷家畜場整えてたのに!」
「あぎゃあああぁぁああああぁぁぁああ!?」
日本人に擬態していた日本の覇者を気取るブルーブラッド・レプティリアンも霊気の球により容赦なく死んだ。
「これで魂の牢獄壊したな、一件落着だ」
ミハエルがそう言った。
「もう理不尽な苦しみだけの人生歩まなくていいよ」
「汚い地球」
ミハエルがそう吐き捨てた。
ミハエルが宇宙から見た地球は青くきれいな球体ではなかった。そう、丸いと思っているのは地球に閉じ込められている囚人たちだけである。本当は凹型の地球。サラダボールのような輪郭である。
「凹型の醜い地球め」
ミハエルが顔をゆがめて凹型の惑星にそう吐き捨てた。
「いいかげん人の悲しみを味わうのやめろ気色悪い星」
ミハエルとサリサが霊波動で火明星から地球圏まで一瞬で飛んでやっている作業は続いた。
「月も壊しとくか」
ミハエルが言った。
「トカゲの機械城だからな。何が岩の塊だよアホ。ムーンショットを止めろ!」
そう言って、ミハエルはエネルギー波を月に撃ち込んだ。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
エネルギー波が月を包み込み、破片すら地球に降り注ぐことなく消え去る。
「死んで光のトンネルへ行くとまた地球に戻されちゃうよ」
サリサが肉体を失った魂に教えてあげていた。
「お花畑には行ってはだめ。そっち(地球)には痛みと苦しみしかないの」
「人類の集合無意識の電脳化に協力させられるわよ」
フィオラも純白の羽を生やした竜の姿で魂たちを導いていた。
「すまないな」
ミハエルが地球人に謝った。寄ってきたレプティリアンのトカゲ頭を蹴りながら。
「レプティリアン殲滅規模になると一度死を通さないと確実に奴らの魔術を解かせられないんだ」
「いちいち呪い解除1人1人やってられん」
「地球人は生まれ変わりのプロセスまで奴らに乗っ取られてるから」
「これ、このブルーブラッド・レプティリアンからの救済ってイエスがするんじゃないの?」
ミハエルが疑問を口にした。
「本当にイエスなんてもんがいると仮定すればね」
「わたしたちが大それたことやって、来ないってことは、いないんだよ」
フィオラが竜のしっぽをうねうねさせながら答えた。
「まさか星1撃で消し飛ばす人こわいって逃げるわけないんだし。聖人なんでしょその人?」
「ま、そう言いたくなるわな」
ミハエルが同意した。
「イエスで魂探した時にリザードマン頭の化け物しか出てこないの怪しいんだよなあ……」
「宇宙人にとって、地球人は捨てたゴミなんだよ」
ミハエルが続けた。
「わたしたちからすれば、魂の牢獄をつくって地獄の球運営する野郎の方がゴミだがな」
「命を何だと思ってるんだ」
「犯罪者だけではなく、『二コラ=テスラみたいな支配を揺るがす厄介者もゴミ扱い。捨てられる』」
サリサが説明した。
「芸術家、発明家などの天才もゴミと一緒に地球に送り込まれた」
「ブルーブラッド・レプティリアンにとって厄介者だから」
「わたし、そろそろ祭りに戻るよ」
ミハエルが言った。
「家族グループの一部待たせてるしさ」
水着でわいわいアリウスや天馬蒼依が騒いでいた時、実は歴史的なことが気楽に起こっていたのだった。
