毎度お読み頂きありがとうございます。
今回は完成した映画の解説で、物語部分はほぼ84話をなぞる物となっています。
これに、劇中の歌唱が加わっていますが、もちろんこれは皆様親の説教より長く聞いた、元となってる異世界の映画の再現だったりします。
しかしタイトル曲の歌詞、解りませんねえ。
昔のCDには作詞不詳とのみあります。
記紀に原典がある訳ではなさそうですし。
何かで日本武尊が詠んだ詩と聞いた事がある様な。
「ケっ!そんな事知らねえで特撮の話なんて書くんじゃねえ!」
てな今では誰でも知ってる話であれば、誠に申し訳ありませんがご教示願います。
次に「古女房が~」の部分、元は神武天皇の熊野征伐の詩です。
一見ひどい女房差別ですが、あれは敵兵に食わせる糧は無い、という比喩です。
本来、宇陀の高城に鴫を獲ろうと待ってたら鴫じゃなくて鯨が獲れた、という一見意味不明な詩が続きますが、これは熊野征伐の大親分、久地氏の子分志木氏がいる宇陀山を責めたら行軍中の久地軍と遭遇してこれを滅ぼした、というタナボタ的な幸運を洒落にしたものです。
特撮サントラでは「兵のうた」「宇陀の歌」と呼ばれるこのPS(プレスコ)17、M29。景行天皇の前で舞われる「久米の歌」PS26に続き、一連を「久米歌」、古代の軍歌とされています。
後者では「撃ちてし止まず」と入りますが、本来前者の各節にもこのフレーズが入っています。
宴会になると思わず歌いたくなる歌であります。
文中で省略したM35B、弟橘姫辞世の句も美しい旋律の曲です。
そして終盤クライマックス、よく「大地の怒り」と称されるM39。
「倭は邦の真良場(真秀ろば)、たたなずく青垣、山籠れる倭し麗し」。
まんまですね。でも著作権千年以上前に切れてますのでセーフ。
これは山の神をスルーしてしまったため呪われた日本武尊が、故郷を思って死の間際に残した詩、思国歌です。
戦時中、故郷を思う兵隊が南方で良く歌ったと聞きます。
果たしてどんな旋律で歌ったのでしょうか。
映画では一節に
「命の全けむ(映画では全き)人は畳薦 平群の熊樫が葉を埋めにさせ」
とあるのですが、これは「無事な物は平群山の熊樫の葉を頭に刺して(降伏の印)山を下りろ」という撤退の指示です。
この後に二つの歌を詠み、日本武尊は無念の死を遂げました。
いずれにせよこのM39、全く不思議な曲で、神々しく始まり、優しさすら感じるコーラスがピアノの伴奏と共に重々しくさえ感じ、特撮史上に残る大スペクタクルを先導していきます。なお、ピアノの伴奏とともに大噴火が起き、一大スペクタクルが幕を開けます。
無念、望郷、理想。それらが人間の想いを越えた男女混声コーラス、伊福部作品では神々しさの表現に男女混声を使うのですが、まさに多くの感情が練り上げられた7分近い大曲です。
かつて「SF映画の世界PART1」で聞いた時(SFとは何ぞや)、その美しさに聞き惚れました。長かったけど。
そしてエンディングM40「浅小竹原 腰泥む 空は行かず 足よ行くな」。
これは日本武尊の妻や子が三重県の鈴鹿に営まれた御陵へ行くと、白鳥となって飛び去った魂を追ったが、思うように進めない無念を歌ったものと言われています。
いずれも「歴史ミュージカル」と呼ばれるに相応しい記紀の歌を使った名曲揃いですが、特にM39は温泉とかで誰もいないと歌いたくなる名曲で、私の特撮アニメソングベストに入る一曲です。
因みにアニメのベストは「ガリバー号マーチ」(作曲冨田勲、作治関沢新一の珠玉の一曲)。