人の手が入らなくなってから、どれぐらいの年月が経っているのだろうか。美しかったであろう教会は、ところどころが朽ちてしまっていた。
「憐れなものだな」
信者に手入れされなくなった偶像は、元の形をとどめていない。信心を集めることのできなくなった者の末路がそこにある。
かつては敬虔な信者だった彼女も、少し思うことがある。
しかし、彼女は信じることを止めた。信じたところで、何も返してくれないだけでなく、過酷な運命を押しつけてくるのだから。
神はいない。そう思った方が楽だった。
「……」
彼女は指をパチンと鳴らす。刹那、彼女の周囲は闇に包まれ、背中にあった羽が隠れてしまった。代わりに身にまとうのは、黒い喪服。
――私では、あなたを幸せにできないから。
全てを憎んだ。人の悪意に傷つけられ、壊すことを望んだ。
しかし、あの日偶然が生んだ出会いが彼女の乾きを潤した。ようやく知れた母の姿。
(それでも、私はあなたと一緒にいたかった)
神を信じていなくとも。
最後まで自分のことを案じていた母を思うくらいはいいだろう。
彼女は目を閉じ、静かに祈ったのだった。
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プロローグ
星使い ティンクル・ライツ ~願いは流星とともに~/想兼 ヒロ - カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880458379/episodes/1177354054880458708