「さんた、って何?」
宿題をしている洋介の横で、おとなしく図書館で借りた本を読んでいたライツはどうしてもそれが気になるようだ。
ちらりと横を見た洋介の目に、両手で本を何とか開いているライツの姿があった。
その本に描かれていたのは、赤い服を着たおなじみの存在。
「サンタクロースのこと?」
洋介の問に、ライツはこくりと頷いた。
さて、どうしようか。
一瞬、何を言うべきか迷ったがそもそもクリスマスの風習をライツは知らないのだろう。
これは、辞書的な意味を答えるべきだ。洋介はそう判断して、ライツに知っている限りの話をした。
「へぇ~」
ライツの瑠璃色の目が輝く。彼女の好奇心を満たすぐらいの話はできたようだ、と洋介は安堵した。
ライツの目が再び本に戻ったので、宿題をしようかと思ったがどうも彼女の様子がおかしい。
本を足で踏みつける。行儀が悪いから注意しようかな、と洋介が思った瞬間、ライツの体が淡く輝く。
「おっ」
光がはじけた。
そこには、見覚えのある服装をしたライツがいた。
「ライツはサンタだよ」
サンタクロースの服装をしたライツが、部屋の中を飛び回る。
「似合う似合う」
「へへへ」
洋介が手を叩いて賞賛する。ライツは嬉しそうに飛び回った。
「あとはトナカイとソリが欲しいなぁ」
ライツの呟きが聞こえ、洋介は考え込んだ。
(プレゼントで用意してもいいけど……ライツのサイズのソリ? それでトナカイ?)
洋介は宿題以上に悩ましい問題を抱えることになったのだった。
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