空は、炎で赤く染まっていた。かつては美しかった町が、今や見る影もない。何を間違えたのか、男は自答した。
ただ、欲しかっただけだ。まるで赤子のように、見えるもの、触れるものを全て欲しがった。その結果、この町を手に入れた。そして、その欲望の結果、せっかく手に入れたものは全て灰になろうとしている。
「ああ、こんなところにいましたか」
顔をあげた。涼やかな声には覚えがある。
おまえは……。
もはや音にならない声がもれた。命も尽きようとしている。そんな男を見て、少年は瞳を輝かせる。
「ボクの言ったとおり、いい景色が見れたでしょう?」あの日、何もなせぬままに朽ち果てようとしていた男に向けられた目と同じ笑みを少年は浮かべている。
男は、ようやく悟った。あの日の笑顔は、天使の救いなどでは無く、破滅への誘いだったのだと。
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