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君がいた季節の終わりに 箱から出されなかったコーヒーカップ

別れの予感が、静かに足音を立てていた頃だった。
彼は、彼女が取材現場で目を輝かせ、「素敵だね」と感動していた伝統的な陶器のコーヒーカップを二組買った。

使うほどに味わいが増し、艶が出てくるその焼き物は、彼が彼女と共に築きたいと願った「深まっていく時間」そのもののようだった。

誕生日プレゼントは、二人で選んで決まっていたが
「クリスマスプレゼントにしようか」
そう提案した彼に、彼女は「いいよ、高いし……」と、どこか控えめに微笑んだ。
彼はそのカップが売り切れるのを恐れ、休みの日に急いで店へ向かった。青と黄、色違いの二客。

誕生日のサプライズで彼女を驚かせ、最高の笑顔が見たかった。
プレゼントを手渡したのは、「急に好きな人ができた」と別れを切り出される、わずか十日前のことだった。

あの時、彼女はどんな顔をしてその包みを受け取ったのだろうか。
彼女の心は、すでに別の誰かの元へ羽ばたいていたはずだ。
それなのに、彼女は彼の真っ直ぐな好意を受け取り、
彼は追い詰められるような予感に抗うように、
急いでそのカップを買いに走った。

結局、そのコーヒーカップが二人のテーブルで重なることはなかった。
伝統の重みと現代の鮮やかさを纏ったその器は、熱いコーヒーを注がれることも、共に「いいよね」と慈しまれることもないまま、行き場を失った。

形あるものは残ったが、そこに宿るはずだった二人の時間は、箱から出されることさえなかった。

「あの時、彼女の心は、本当はどこにいたのだろうかー」

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