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書き留めておく力


 創作者というのに必要な能力とは何か。

 感受性、表現力、想像力。
 より深めたいなら知識や教養、自分なりの人生哲学も必要だろう。
 人気を得るという形で幅広く伝えたいなら、営業力やコネも能力に入るか。

 だが、それらは生半可に手に入るものではないし、限られた人にしか許されない、特権的なものも含まれる。


 誰でも簡単にでき、そして創作にとって欠かせない能力(習慣)があるとするなら、
 起こった出来事を瞬時に書き留め、自分の肥やしにすることだろう。
 それはどんなショッキングな話でも、夢のような曖昧模糊な事象でも、身内に起こった事件でも、緊急性の高い(本来書くどころじゃない)問題でも、素知らぬ顔でメモ帳に書き留めるということだ。

 分かっている。面が厚いなんてものじゃない。
 だが、そうしなければ弱い者たちは太刀打ちできない。
 創作者は例外なくエゴイストだ。
 それは世間にとって何も為にならないもので金を稼いでいるからじゃない。
 勝手気ままにやっている(ように見える)からでもない。
 自身のエゴをフィルターにした事実を売ってるからだ。
 創作者にとって、エゴこそ商売道具だ。

 自意識は体験によって磨かれる。だが体験は知識と違って速やかに忘却される。
 特別に意識しないと、変化を検知できない。
 若い時には尖った作風の人が、加齢とともにやんわりとした作風になったことに、本人自身も不思議に思うことがある。
 そこに適当な、尤もらしい整合性をつけてしまう。

 だからこそちゃんと書き込む。
 脳に刻み込むなんてものは信じられない。
 少なくとも私には刻み込んだ出来事を、後で正確に振り返る自信はない。

 地味の極みではあるが、こういった活動もまた創作の一環だと思う。種を蒔く前に土壌を整えておくようなものだ。

2件のコメント

  • 僕も、メモの量は半端なく多いです。何かに、取り憑かれたように、書いている自分。エゴイストだと思います。
  • コメントありがとうございます。
    メモの大半は案の定、自分以外にはさっぱり見当もつかない内容だったりするわけですが、
    まあ自分にさえ理解できれば問題はないのです。時たま自分すら分からないメモが出てきたりもしますが、それはその当時の自分の叫びだったのだと思うことにしています。
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