「砂姫」の題材集めのため(!?)、砂の女を読み返しているのだが、前回読んだときより断然面白くなっていた。
レビューを通じて読解力でも向上したのか、難解に思えた部分に味を感じられるようになった。あと思ったより「砂の女」とされる女性が生き生きとしていた。口調こそは謙った大人しめの人だが、主張は割とするし、経過とともに進展もする。
そして、思ったよりも異世界転移モノに近い構造を持っていることも分かった。よくある転移系作品へのツッコミに「戻る気あんのか」「元の世界の生活があったろ」というものがあるが、砂の女はその問題を見事に解決している。
男は全力で抗う(女を人質にすらする)し、砂の世界はお世辞にも良い環境ではない。だが、物語を読み終えて振り返ると、男の行動や設定に無理がないことが分かる。
哲学的な問いかけ以前に物語として面白い。ここらへんは少し前で挙げた児童文学「モモ」にも通ずるところがある。
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この物語は「俺の戦いはこれからだエンド(なお、その未来は冒頭に示唆されている)」である。
読者目線ではあまり明るい気分にはなれないが、男からすると前向きな終わり方ではある。
何エンドと見做すべきなのか。
ビターエンドか、メリーバッドエンドか。人によってはハッピーエンドと取る人もいるかもしれない。
いや、そもそもこの結末に幸せ不幸のラベルをつけること自体が間違っているかもしれない。
彼はただ選択をしただけだ。人生に数多くある選択の機会、その中の一つの話だったということだ。