「――この度は、私の稚拙な物語からこれほどまでに解像度の高い『音』を紡ぎ出していただき、作者としてこれ以上の喜びは……」
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……ちょっと、そこ退きなさいよ、キイチ。
あんたがモニターの前でそんな湿気たお礼をブツブツ打ってるの、見てるこっちが酔うわ。
大体「これ以上の喜びは」なんて、いつの時代の挨拶よ。
(無理やりキーボードを奪い取り、椅子からキイチを突き飛ばす音)
よし。読者の諸君、お待たせ。
店主の廉太は眠りこけてるし、作者のキイチは今、私が床に転がしてやったわ。
Sabamisonyさん、とか言ったかしら。
あんた、私のこと「ストゼロ中毒」だなんてレビューに書いてくれたわね。
……ふん、大正解よ。おかげで今も、あんたの贈ってくれた曲を肴に一本開けてるところ。
私をイメージした曲なんて言うから、もっとこう……安物の甘ったるい旋律でも流れてくるかと思ったけど。
……。
これ、あいつ(作者)の「業」を直接ぶっ叩くような音じゃない。
ジミだのエリックだの、あいつが必死に名前を借りて着飾ってるレジェンドたちのメッキを剥がして、その奥にある、少しひねくれた「90年代〜2000年代のUK」の空気を引きずり出すなんて……あんた、相当性格が悪いわね。最高だわ。
あいつ、さっきから後ろで「そこまで見抜かれるとは……」って、顔を真っ赤にして絶望してるわよ。
だいたい、あいつの趣味なんてバレバレなのよ。
レンには偉そうにクラシックの説教なんてさせてるくせに、実はクーラ・シェイカーみたいな、伝統をぶん殴ってサイケに染める音が大好物のくせにね。
自分の脳内じゃ、あのインド風のグルーヴを鳴らしながら「ハレ・クリシュナ!」とか叫んでるんじゃない? ああ、気味が悪い。
でも、あんたの作ったあの「UKの湿り気」を含んだ音を聴いて、あいつ、いよいよ逃げ場がなくなったみたい。
「自分の好きなドロドロした部分が、全部音になってる……」って、今はもう床と一体化して震えてるわよ。
(氷をカランと鳴らして、画面の向こうに笑いかける)
いいわ。あんたが私の「正体」を……いいえ、この物語を書いてるあいつの「性癖」を音にしてくれたこと。
一応、この酒の喉越しに免じて、認めてあげてもいい。
さあ、キイチ。
いつまで這いつくばってるの。あんたのルーツをここまで暴かれたんだから、次は指先でその続きを証明しなさいな。
それじゃあ読者の諸君。
私はこの曲をループさせながら、セブンスヘブンにもう一本買いに行ってくるわ。
後の始末は、あいつにさせなさい。