九月に入りましたが、まだまだ暑い日が続きますね。
個人的には寒いより暑い方が好きで、終わらない夏にどこか嬉しさを感じています。
……そんな中、今は夏風邪をこじらせ中の担当です。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、皆さまもどうぞご自愛くださいね。
さて、今回の特集テーマは「人知を超えた超常現象」です。
普通の少年と不思議な少女が学園に潜む怪異に向き合う物語、救済を望む村で起きた超常現象を描く幻想譚、超常現象研究所に勤める青年が次々と不可思議な依頼に挑む物語、そして、大切に集めたフィギュアが動き出し幸福から恐怖へと転落していく物語、の4作品を紹介いたします。
本特集に選ばれたレビューをご投稿いただいた方には、9月中に500円分の図書カードをお送りいたします。今後とも、素敵なレビューのご投稿をよろしくお願いいたします。
人目を避けるように教室の隅で佇む、美しくも冷たい少女――月ノ瀬冴。
同級生の五十井涼介は、彼女にふとした興味から声をかける。
噂話にすぎなかったはずの「超常現象マニア」という奇妙な肩書。
けれどその先にあったのは、噂では済まされない「何か」だった。
奇妙な蔵、封じられた鏡、不自然な静寂、そして伸びてくる黒い影。
彼女の家に流れる「怪異」の血と、「呪い」という言葉が現実味を帯びるたび、
涼介は、ただの好奇心では踏み込んではならない領域へと近づいていく。
それでも彼女は、一人ですべてを抱えようとする。
誰にも頼らず、誰にも心を明かさず。
それでも彼は――彼女の震える声と、その背を、見過ごすことはできなかった。
これは、正体の見えない「怪異」と、
誰にも頼らない少女の「孤独」に触れていく、
ひとりの少年のささやかな決意の物語。
苦しい毎日から救われたい。そんな村人たちの祈りが届いたのか、ある日、体に不思議な変化が訪れます。体がふわっと軽くなり、空に手が届きそうになる毎日。人々はこれを神様からの贈り物だと信じ、村は喜びに満ち溢れます。
少しずつ、でも確実に変化していく日常の描写が本当に巧みで、ぐいぐい引き込まれます。短編ならではのスピード感で一気に読めるのも魅力。ラストを読んだ時、きっとあなたも物語の最初から全てを確かめたくなるはずです。
超常現象やオカルトの世界に対抗する専門家集団、八咫超常現象研究所。
それは現象の解決だけではなく、人々の心の隅にまで入り込んだ鬼退治までしてくれる職人たちの集団です。主なメンバーは3人ですが、一人一人がそれぞれ得意分野を持ち、任せて安心のプロたちです。
そして、そんな彼らは、常に命を賭して職務を全うしてくれるのです。
そう、悩めるあなたのために・・・
今日も、不可思議なものに翻弄される人が、雑居ピルの7階までやって来ます。八咫超常現象研究所のドアをノックし、誰にもわかってもらえない問題を打ち明けるために・・・。
うだつの上がらない、一見ごく普通のサラリーマン――そんな彼にも、ひとつだけ譲れない趣味がありました。それは、愛するフィギュアとぬいぐるみに囲まれて過ごす、誰にも邪魔されないひととき。「彼女」たちだけが、彼にとっての生きる意味でした。
そんなある日、彼のまわりで、信じがたい異変が起きます。なんと、「彼女」たちのうちの一人が、まるで命を宿したかのように動き出し、さらに、また一人と動き出したのです。
当然、彼は歓喜します。まさに夢のような生活の始まり……だったのですが。
この物語は、全2話構成となります。第1話で描かれる彼の幸せ。そして第2話では、それが音を立てて崩れていく様が見事に描かれています。喜びが恐怖に変わり、恐怖がさらなる恐怖を呼ぶ――畳みかけるようなゾワゾワ展開に、最後まで一気に読んでしまいました。