Vol.2 kisaragi_0215
刹那に手首につめたい触手が巻きついてきた感覚!
ブワッと俺の手の甲に吹きでたのは寒えぼだった。
――姉さん!
成仏してくれ、と続けたら命がなかったかもしれない。
ぎりぎりで死霊の意識をどこかここでないところに逸らすネタを思いついた。
「……西行好きだったよね、俺も好き。高野山だっけ、卒業旅行で聖地を訪ねたのは?」
俺の心象の中でのみ、おかっぱ、山の手のお嬢様学園の伝統的な濃紺に清楚な白いセーラーの襟がひらっと舞った。同時に淡く白い山桜か、落ちた白椿が室内に散華したようなイメージで脳裏にフラッシュがまきおこる。
次の瞬間、少女の霊体は溶けるように消えてなくなった。
「なんや、今の?」
すっとぼけた調子の
「聖地巡礼って何のこと。卒業旅行とか……意味わからん」
「とっさに思い出した。亡くなったリカが高校の卒業旅行で、クラスメートと行ったのが高野山なんだ」ますます訳がわかるまい、と思ったがマリオはにっこりした。
「いいところだよね、もろ山って感じだけど」
そうだった、こいつは和歌山出身だ。
「久しぶりに登ってみたいかな」
「そんなのんびりした事態じゃないかもしれない」俺は痛痒い感覚を伝える自分の手首に目を落として言う。海月に触れたときの刺激にも似ていたが、明らかに人の指のあとがうっすら紅く捺されている。
呪い慣れなんて常人でいたいから認めたくないが、慣れていたって心底こわい。しかもいつものリカとはまた異なる純粋な鋭さ、無垢というか容赦ない感じを受けた。あのおかっぱ美少女霊からは。
その時、ぽーんという電子音が俺のスマホからした。
怯えていると着信音にもびびってしまう。たとえそれがラインのものでも。
だが、ポケットからスマホを出し画面を見た俺は凍りついた。その電話番号は解約後に消去したはずのリカのもの。グループラインに知らぬ間に追加されていたのは……
kisaragi_0215
――kisaragiってきさらぎ駅か?
呆然とスマホを握っている俺に、茉莉夫は冷静な視線をそそぐ。
謎のアカウントを読み込んでいたのだ。
「西行で検索してみたら、辞世を詠み死んだのが陰暦の二月十五日とある。
……マリオ、やめてくれ
ほんとお願い、やめて。そういう怖いの繊細なオヤジの神経には堪えられそうにない。
春死なむ 宝井星居 @yohinoyume
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