【お題フェス「手」】宇宙(そら)の運び屋は、猫の手も借りたい
角山 亜衣(かどやま あい)
とっても忙しいのです
カルディア星系:第二惑星・カルディアⅡ 近郊──
「ふぅ~、思ったよりも時間を食ったわね。
リリス、カルディアで積み込んだ荷物のお届け先も加味して、
ルートの最適化お願い! まったく、なんだってのよ、この忙しさは!」
『承知しました、マスター。“猫の手も借りたい”という状況ですね』
「はあ? 猫の手? そんなの借りたって、何にもならないじゃない」
『“猫の手も借りたい”というのは、大昔の「ことわざ」というものです。
あまりに忙しくて、どんなに役に立たない相手でも人手が欲しい、
という意味です』
「ふぅ~ん……。でも、猫じゃ、どうにもならないじゃない。
欲しいのは人手でしょ?」
『まぁ……、それは……、ルートの最適化、完了しました』
あたしは、セレスティナ・エシュタール。
AIの相棒リリスと、“貨物船レムリアス”を駆って宇宙の運び屋をやってます。
依頼が多いのは嬉しい悲鳴なんだけど、てんてこ舞いよ。
単独ワープ用のエネルギーは貴重で高価だから、使うわけにはいかないし。
『マスター、カルディアⅡで受領した積み荷ですが、
コンテナ内に小さな生体反応があります』
「え……『小さな』ってのは、具体的に言うと? 虫じゃないわよね……」
『人間で例えるならば、二歳~三歳程度でしょうか。
反応が弱まっています』
「大変じゃない! 見てくるから、自動操縦よろしく!」
今の時期は
積み荷のスキャンを端折ったのが裏目に出ちゃったみたい。
コンテナの中に子どもが迷い込んでるなんて……
「リリス、反応があったのは、どのコンテナ?」
『No. 4 です、マスター』
……No.2、No.3、No.4、これね!
プシ──ッ
コンテナを開けると、中に居たのは人間の子どもではなく……
《にゃ~、にゃ~》
「子猫?」
☆
『良かったですね、マスター。猫の手を借りられますよ?』
「……この子が何をしてくれるっていうのよ。
困ったわね。
宇宙港に引き返してたら、時間が」
言いかけたとき、子猫が立ち上がった。後ろ足だけで。
「ね、ねぇ、リリス? 猫って……四足動物よね?」
『もちろんです、マスター』
「でも、この子……二足歩行してるわよ?」
『……、たしかに、見事な二足歩行ですね』
「それにほら、前足? 人間の手みたくなってない?」
《にゃ~にゃ、んにゃ、んにゃ》
なにかを訴えかけてくるように、
喋っているように聞こえる。
「ねぇ、リリス。この子の声、翻訳機に掛けてみてくれる?」
『承知しました、マスター。……、……、これは……』
「どう?」
『どうやら、その子は猫ではなく、“キャルム族”のようです』
「キャルム族?」
『はい。この辺りの星域では、大変珍しい種族です』
「へぇ~、キミはそんな珍しい子だったのにゃ?」
全身をわしゃわしゃしてやると、気持ちよさそうに身体をくねらせる子猫。
いや、キャルム族の子ども。
「ってなことやってる場合じゃないわ!
早く帰してあげなきゃ!
リリス!」
『承知しました、マスター。惑星カルディアⅡの宇宙港へ引き返します』
☆
カルディア星系:第二惑星・カルディアⅡ 宇宙港──
宇宙港へ降りると、迷子を捜すアナウンスが聞こえてきた。
迷子センターへ行くと、猫の耳をした人が、
尻尾を揺らしながら、辺りをキョロキョロしていた。
「丁度良かった!
パパかな? ママかな?
きっと、あなたを探しているのよ」
《にゃ~、にゃ、にゃ》
タッタッタッ──と駆けていく子猫ちゃん。
《ニャーニャー!!》
ぎゅーと抱きしめて再会を喜んでいるようだ。
「ごめんなさいね、コンテナの中に紛れ込んでいたのに気付かずに……」
《にゃんのにゃんの、こちらこそご迷惑をおかけしましたにゃ~》
「じゃーねー、子猫ちゃん♡ もう迷子にならないようにね!」
結局、パパなのかママなのか、わからないままお別れした。
☆彡
あたしの今の記憶では、初めて出会う種族だった。
広い宇宙には、人間以外の種族も居るのねぇ。
『マスター、お荷物の配達指定日時が迫っておりますが……』
「ぎゃー!! 大変!! こうなったら、奥の手を使うわよ!
リリス、単独ワープの準備!!」
『大幅な赤字になりますが、よろしいですか?』
「評価が下がるよりはマシよ!」
『承知しました、マスター』
<了>
お付き合い頂きまして、ありがとうございます。
本編の方も、応援よろしくお願いしまーす☆彡
『宇宙(そら)の運び屋は、あなたの想いを届けます』
【お題フェス「手」】宇宙(そら)の運び屋は、猫の手も借りたい 角山 亜衣(かどやま あい) @Holoyon
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